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夜が明け、日が昇ると真冬にも関わらず、軽快な日光を全身に浴びた。自分の真っ黒い影を踏むように歩く。
衣装に着替えて、スタジオに入り、メイク室でメイクさんを待っていると、ふと真正面にある鏡に目をやった。
『 どいつもこいつも… 』
気づいたら口が開いてた。自分でも何を言ったのかわからない。ハッとした時は遅かった。
さっきまで空いていた隣の席に、吉沢さんが座っていた。
持っていた台本ではなく、鏡越しで目をまん丸にさせながらこちらを見ていた。
『 ……おはようございます！ 』
にっこりと笑ってそう言った。頬が引きつりそうなくらい笑った。無理があるだろうけど、でも、何も言いたくなかった。
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「 どうして笑ってるんですか？ 」
その言葉に胸がどきっとした。
一点の曇りもなさそうな表情が怖くて、
何の邪心も虚飾もない目が憎くて、
口も開かないで目線を逸らした。
そしたら吉沢さんは急に立ち上がって出て行った。なんとなくほっとしたような気がする。
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「 はい 」
目の前にずいっと差し出された。
今度は私が目をまん丸にさせた。
「 あ、コロッケです。」
『 いや、それはわかってます。 』
見ればわかる。
食べ歩き用みたいに紙で包まれたコロッケ。
それを有無を言わさずに押し付けられた。
「 俺からの差し入れです。一足先に食べましょう？ 」
「 朝ごはん食べてなかったんですよね。 」なんて言いながら吉沢さんは口を大きく開けて食べ始めた。
さっき出て行ったのってこのため…？
『 あの 』
次の言葉を言おうと口を開いた時、アレが鼻の奥に届いた。吉沢さんは首を傾げながらも、コロッケを食べ続けてた。
私もそれを恐る恐る口に運んだ。
さくっ、と衣の気持ちのいい音がすると、牛肉の旨味と油、それに負けじと野菜の甘さも口の中に広がる。
嘘
その瞬間、一陣の風がすっと通り抜けた。
『 ふふふ…… 』
胸が熱くなり涙が目に溢れてきた。それを乾かそうと仰いでいると、口元がへらへらと締りが無くなってきた。
泣きながら笑うっておかし、なんて思いながらも流れた涙を手のひらで拭った。
『 なにこれめちゃくちゃ美味しい！！ 』
「 でしょ！？ 」
『 ほんまに美味しい！！ 』
「 流石俺！センスいい〜！ 」
『 何いうてねん 』
急に変なことを言い出す吉沢さんが可笑しくて、バシッと肩を叩いて大きな声で笑った。
叩かれた吉沢さんも同じように笑った。
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＊hana＊(プロフ) - いろんな曲の歌詞をうまく使われていて世界観に引き込まれました！ (2018年11月18日 12時) (
レス) id: 063790d3e6 (このIDを非表示/違反報告)
s!ma(プロフ) - めちゃくちゃ泣きました、描写が独特・言い回しが独特でハマって抜け出せなくなりました。表現力に惚れました！のみこまれます。続きも楽しみにしています。 (2018年11月17日 20時) (レス) id: 457760168e (このIDを非表示/違反報告)
ルート(プロフ) - うわぁぁぁぁぁぁ！！！！途中読んでいて涙が出て来ました…良い意味で鳥肌が立ちました。続きを楽しみに待っています！！語彙力がなくて上手く気持ちを伝えることができないのが本当に残念です…笑 (2018年11月17日 7時) (レス) id: e7cea7fca8 (このIDを非表示/違反報告)
さかなちゃん(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました。続きを楽しみにしています。 (2018年11月16日 23時) (レス) id: 6abe047d30 (このIDを非表示/違反報告)
toshimitutetuya(プロフ) - 展開がハラハラして面白い！ (2018年11月16日 0時) (レス) id: e5d647a456 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：空海
| 作成日時：2018年10月28日 15時
