__亮ちゃん ページ10
「なぁ話あんねんっ」
朝7時、仕事前の1番忙しい時間にする話なんてきっと、金くれとか、今日飲み会だから夜ご飯いらないとかどうせくだらないことだろうと思って
「なに？帰ってきたら聞くから」
あの時も私は、そう言って亮な話を聞こうとしなかった。
私の不機嫌を察して、それ以上のアクションを起こさない亮は、きっと私といる約10年間でこの場面を乗り切る術を身につけたんだと思う
「お金ならそこに入ってるから」
私が引き出しを指さして、ぶっきらぼうに言う。
「ちゃうねん⋯」
ちぃさい亮の声が聞こえたけど、無視して
「⋯いってきます」
玄関のドアを開けて仕事に行った。
もちろん亮からの「行ってらっしゃい」もましてや玄関先でのキスなんてものはなかった。
本当にお金を漁ってるのなんて⋯見たくないから振り返ることはしなかった⋯。
『別れないの？』って、もう耳にタコができるほど聞いたセリフ
地元の友達、同僚、親、誰に相談しても同じ言葉ばっかり言われてきた。
けど別れないの？に対するわたしの答えは「どうだろ。わからない。」だった⋯
亮と出会った高一から、今20代後半⋯約10年を一緒に過ごしてきた。
元々喧嘩ばっかして、学校には来ないよーな俗に言う不良？ヤンキー？だった亮にバンドとゆう夢を見せたのは私だった。
父の影響もあって私はちいさい時から、歌うこともギターも大好きだったから、いつの間にかバンドを組んでギターとボーカルをしていた。
バンドの練習の帰り道に、喧嘩したのかボロボロの亮が座り込んでるのを見つけて、私から声をかけた。
「大丈夫？」
「は？関係ねぇやろ？」
顔を見ずにメンチ切ったであろう亮は、声をかけてきたのがたまたまクラスメイトだったことに後から気づいてめっちゃ謝ってきた。
「まじでごめん！」
「いやその面で謝られても逆にビビるんだけど。笑」
口の端とか切って血が出てんのに、そんなにぺこぺこしてたら笑ってしまうわって。笑
そのあとに、とりあえずってなんでか行ったカラオケで初めて聞いた亮の歌が上手くって…言っちゃったんだよね
「喧嘩なんてやめて、バンドやんなよ！」
「亮なら、本気でやればプロになれるよ！！」
「ギターなら教えてあげるから！！！」
はじめは、いやいやって言ってたのに、数分後には私のギターで本気で練習してた。
それからは喧嘩はおろか、今までの友達とも会わずに、私と毎日ギターの練習して、そりゃ好きになるって…
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作者名：七海 | 作成日時：2023年12月5日 11時
