6日目 夕方 ページ30
る「失礼しまーす」
コソコソ声でそう言い、今日の仕事を終えた僕は救護室に入る。
中を見渡すと、保健室にあるような、白のシンプルなベッドがいくつか、カーテンレールを挟んで並んでいる。
その中で、1番奥のカーテンだけが閉まってる。
あ、ここかな。
る「Aちゃーん?起きてますか〜?」
万が一、僕の声で起こしちゃったら申し訳ないなら、できるだけ小さな声で問いかける。
が、カーテンの中から返事は帰ってこない。
うーん、これって入ってもいいのかな。
まぁいっか。
シャッとカーテンを開けると、救護室に運ばれた時と比べ、赤みが抜け、穏やかな表情で寝ているAちゃんがいた。
よかった、倒れた時は、ほんとにビビったんだから。
近くにあった椅子を引き寄せ、ベッドの横に座る。
今日の昼、バイトで焼きそば焼いてたら、急にころちゃんが呼びに来て。
「るぅとくん、やばい!Aがトラブルに巻き込まれてる!」なんて言い出すから、本っ当に心配した。
ころちゃんの後について行き、野次馬の間をすり抜けて行った、僕の目に飛び込んできたのは。
警備員に連れてかれるおじさんを見つめながら、ゆっくりと倒れるAちゃん。
ヤバい、と思うよりも早く僕の体は動きだし、灼熱の砂浜の上に倒れる寸前で、なんとかAちゃんを受け止めたのだ。
その時のAちゃんは、顔は真っ赤で手足が少し震えていた。
多分、熱中症と殴られた恐怖が、同時にきたんじゃないかな。
僕はそのままAちゃんをお姫様抱っこし、この救護室に運び込んだってわけだ。
本当はずっとAちゃん傍にいたかったんだけど、流石にアルバイトを抜けることは出来ず、こうしてバイトが終わった直後に、直行した。
クーラーで表面だけ冷えたAちゃんの頬を、そうっと撫でる。
Aちゃんはそれに反応することなく、気持ちよさそうに眠ったままだ。
危機感、ないなぁ。こんなんだから、僕みたいな奴に好かれちゃうんだよ。
ふふっと、自虐的な笑みを零す。
「大好きだよ、Aちゃん。」
いつも元気なところも、ちょっと危なっかしいところも。
僕のことが大好きなのに、きっと僕が告白したら断るところも。
あーあ。
早く、僕のものにならないかなぁ。
そんな願望と欲に満ち溢れた言葉は、クーラーの音ですぐにかき消された。
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たこ天(プロフ) - 泡糖さん» コメント、ありがとうございます!ずっと探していただいていたなんて……(⑉・ ・⑉)今後も変わらず、スキスキの行き過ぎた夢主ちゃんをお届けできるよう、更新頑張っていきますね😊 (2022年7月11日 23時) (レス) id: 033e158aaf (このIDを非表示/違反報告)
たこ天(プロフ) - 冬さん» コメント、ありがとうございます!もうすぐ続編ですが、そちらもなるべくこのペースを維持して投稿出来たらと思っているので、楽しみにしていてください😌✨ (2022年7月11日 23時) (レス) id: 033e158aaf (このIDを非表示/違反報告)
泡糖(プロフ) - この作品、過去に見つけてずっと探していました!久しぶりに見ても いい意味で変わってなくて好きです!どうして高評価が一つしか押せないんだ…!尊いボタンみたいなものが欲しかった!無理のないように更新頑張ってください! (2022年7月11日 22時) (レス) @page4 id: eaad00c70c (このIDを非表示/違反報告)
冬(プロフ) - いつも、この作品の更新楽しみに毎日過ごしています!これからも更新頑張ってください。応援しています! (2022年7月11日 21時) (レス) id: 1fb06db6d9 (このIDを非表示/違反報告)
たこ天(プロフ) - りまおさん» こちらでもコメントしていただき、ありがとうございます!続編も更新頑張りますね💪 (2022年5月15日 8時) (レス) id: 033e158aaf (このIDを非表示/違反報告)
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