【ヒロアカ】普通科の問題児Ⅱ【男主】 (ページ9)

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立派なヒーローにページ9

『彰人は甘える先も、当たる先も私しかいなかった。だから当たった。だから甘えた。』

「甘えた覚えなんて、」

『素直に泣きながら、すべてを話してくれたことがあります。
愛されたいと、見ていてほしいと。だからどんなにあたられても、愛想を尽かしたりなんてしたくなかった。どんなにひどい事を言われても、私が、あなたの家族となりたかった。なってやりたいと思う程の素質が、彰人にはあります。』

甘えた覚えなんてなかった。

愛されたいと漏らしたことなどなかった。

見ていてほしいと言ったことなどない。

それでも、彼にはすべてを言っていたのか…

『私は彰人を見ています。見守っています。いつでも。ずっとです。ストーカーみたいですね。』

恥じらいの笑みが伝わってくる。

『あまり自身を卑下しないでください。立派なヒーローになるんでしょう？なってください。そして私に、立派になった姿を見せてください。』

「あぁ。なるよ。立派なヒーローになる。絶対…」

涙が溢れた。

見ていてくれている。それだけで、どれだけ心が救われるか。

『はい。それにもう、私は湯上家とは縁を切りました。』
「え！？」
『使用人を辞めてきましたよ。彰人の家を解約したのを知って、もう関わる理由がなくなったので。』
「そ、そんな」

『だから、これからは、親戚の人くらいでいいので、たまに連絡ください。しばらく実家で仕事探ししますが、またすぐに戻ります。だから、また会いましょう。』

「うん。わかった。会いに行く。僕が立派なヒーローになって、でっかい家でも買ってやる。」

『楽しみにしていますね！』

「うん。」

『それでは、電車に乗ります。今度は携帯でかけてきてください。』

「うん。かける。絶対かける。…またね。」

『はい。また。』

糸が切れた。音がした。

夢から現実に戻る感覚。

余った十円玉を財布に仕舞い、電話ボックスを出る。

夕暮れの空が綺麗だった。

世界が澄んで見えた。空気が変わった気がした。