手品師匠と手品師少年 (ページ10)

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～僕の手品～ nine　ページ10

１０年後・・・

特に大きな変化もなく、いつも通りの日々が続いていたある日。

僕が２５歳になった誕生日の日。

事件は起こった

『誕生日おめでとう❗ベル』
「ありがとォ～！」

師匠が僕のために買ってきてくれたケーキは
苺のショートケーキだった。

切り分けて、二人で食べようとした
まさにそのとき

[poordropout(ﾌﾟｱｰﾄﾞﾛｯﾌﾟｱｳﾄ)！！少し一緒に来ていただけるかな]

国王の側近の男達が師匠を呼びに来たのだ
あ、poordropoutというのは世間から呼ばれている師匠のあだ名みたいなものだ
憐れな落ちこぼれと言う意味でみんな呼んでいる。

『(ボソッ)ついに来たか。この調子だと来ないと思っていたのだが』

師匠がそう呟いた気がした

「え・・・！？」
[何か言ったか？]
『いいえ。何も。』

師匠は両手を上げて負けましたの合図をした
すると男達は懐から拳銃をだして

師匠の頭に向けて押し付けた

[ご同行願えますかな？]
『あぁ、それは構わんが、少し時間を頂けるかな？』
[・・・良いだろう。しかし１０分だけだ]

男は拳銃を頭から放した
すると師匠は部屋の奥の方へと入っていった
３０秒位たってから、師匠は戻ってきた

『はい。ありがとうございました。これでもう大丈・・』
[待て。そのシルクハットを取れ。」
『あははは。中に何か細工がしてあるとでも思ってらっしゃるのですか？ありませんよそんな物』
[いいから外せ]

男は又も拳銃を師匠の頭に押し付けて脅した
師匠は渋々帽子をとり、僕の方に近づいてきた。そして

『じゃぁ、これはベルに預けようかな。いいかい？』
「・・・う・・ん」

僕の頭に、シルクハットを載せた。
何が起こっているのか。どういった反応をするべきか。全く整理できなかった僕の脳を
次の師匠の言葉が打ち消した

『いいか、ベル。良く聞くんだ。明日の朝、荷物を最低限まとめてここから逃げろ。行き先は隣国。行き方を書いた紙は奥の部屋に置いておいた。ただひたすらに走れ。約束できるか？』

小声で、
僕にしか聞こえない声で
師匠は確かにそういった

[早くしろ！]
『せっかちだなぁ。もう行きますから』

男達は師匠を取り囲み、遠くの方へ行ってしまった

「アイビー！！！」

どんなにどんなに叫んでも、

師匠が振り返ることはなかった

〝明日荷物をまとめてここから逃げろ。〟

師匠の言葉のひとかけらが

僕の心にこだました