手品師匠と手品師少年 (ページ6)

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～僕の手品～ five ページ6

「ここに剣を刺して、ここをこうして、あ！人形いれるの忘れた‼」

僕はあれから毎日、串刺し芸を練習していた
勿論他のマジックもやったけど、大体全部師匠からOKを貰っていた
唯一貰っていないのは串刺し芸だけだった

「人形人形・・・あれ？人形がない‼」
『あっはは❗ベル、忘れ物。』

無くなった人形を探しているとそこに師匠が現れた
話によると、先程師匠に披露した手品で僕は人形を使ったのだが手品を終えたあと忘れていったようだ

『どうだいベル？串刺し芸の出来栄えは？』
「じ、順調だよ！」

勿論嘘だ。
しかし師匠はなにも言わず悪戯な笑みを浮かべる
こういった表情になるときは、大体僕の心の中を見透かしているときだ

「なに。」
『いや？まぁ、せいぜい頑張れ。』

意地悪。
喉まででかかったその言葉を必死に飲み込む

「いーーだ！」
『べーーだ！』

やっと言えた言葉がこんなに馬鹿らしい言葉になってしまったことを後悔する
まぁ、師匠も同レベルだと分かったから良しとしよう←

そして師匠を部屋から追い出し、練習を再開した

「アイビー、僕は貴方のようになれますか？」

何を思ったか。僕は無意識にそう呟いていた。
ハッと気づいて何を言ってるんだと呆れていると急に外から声が聞こえてきた

『明日・・・いや、５日後か・・・まだ先かもしれない。駄目だ・・・分からない・・・こればっかりは・・・』
「ししょ・・・アイビー？」

恐る恐る外に顔を出してみるとそこには頭を抱えている師匠の姿があった
僕は師匠の服を引っ張ろうと手を伸ばした

『ベルは15歳だが、出来るだろうか？いや・・・でも』
「アイビー？」
『！！あ、ああ、ベル。どうした？』

師匠は平常を装っていたが完璧に表情が強ばっていた

「どうしたのさァ～？アイビーらしくないねェ？」
『・・・』

急に黙る師匠。下を向き、次に顔をあげたとき、その表情は真剣なものになっていた

『なぁベル。君は１日で向かいの国へ行けるか？』
「え？１日で？うーん・・・」
『難しいかな？やっぱりまだ』
「ううん。出来るよ！大丈夫‼」
『ベル・・・ありがと。でもな、』

一度言葉を切り、深呼吸をしてから、師匠はこう言った

『たまには、我儘を言っても良いんだぞ』

見たことがない師匠の寂しそうな笑みがこぼれる

しかし僕はまだ、その師匠の言葉の本当の意味を、理解できていなかったのだ