手品師匠と手品師少年 (ページ3)

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～僕の手品～ two ページ3

今日もまた、師匠と手品の練習をしていた
すると、遠くの方から3歳くらいのガキどもが5、6人走ってきた

［マジシャンしゃーん！！まじっく見せて！！］

見せて見せてーー！と他のガキも叫ぶ
師匠は少しこちらを向き、僕に目で問いかけた

「大丈夫。僕、少し1人で練習してます」
『悪いな、ベルキア。すぐ戻ってくる』

［早く早く！！マジシャンしゃん！］
『はいはい、すぐに行くから広場で待っていてくれますか？』
［うん！］

ガキどもは元気よく返事をすると広場の方にかけて行った
師匠はマジックをするための道具を持って、ガキどもの後を追った

「師匠・・・」

静かに師匠の後ろ姿を眺める

「マジシャンさん・・・か」

マジシャン、手品師、師匠。
僕は師匠のことをその3つでしか呼んだことがない
何故なら、師匠には名前がないからだ

「僕と、同じ。師匠・・・」

そう。僕にも名前がなかった。生まれてすぐに、親に捨てられた。
このベルキアという名前は、師匠がつけてくれたものだ

『さぁさぁ喝采を！マジックショーの始まりだよォ～！』

広場から師匠の声が聞こえてきた。
師匠は言葉を発するのとほぼ同時にシルクハットから剣を出した。
ガキどもは嬉しそうに眺めた
その時

『まずはこのハンカチでーーー』

僕は師匠の後ろの方で何かが動いたような気がした
そして、それは当たっていた。
急に後ろの茂みから石が投げられた

『イテッ！！』
「！！！」

石を投げつけたのは15歳くらいの男子だった

［［ざまみろバーカ！お前なんかいなくなれ！！］］
［あ！！ひどい！なんでそんなことt］
〔またここにきていたのね！ダメじゃない！さぁ帰るわよ〕

師匠を庇ってくれたガキどもも、迎えにきた親に連れられて強制送還されてしまった

「師匠・・・！！！」
『んあ？ベルキア、どうしたんだい？マジックの出来栄えを見て欲しいのか？』
「い・・いや、石ぶつけられていたから」
『あっはははは！気にしてないよ』

師匠はいつもの笑顔のままだった。僕はそんな師匠の表情を見るたび、胸が締め付けられる。

師匠は、この国にとって邪魔者で迷惑な人だということを
再認識させられるからだ

『さぁ、もう観客もいないし、ベルキアのマジック、見てあげるよ』

ニッコリ笑いかけてくれた師匠に
僕は何も出来なかった