二十九話 ページ32
久し振りに外に出た。
ヨコハマは今日も賑わっている。
行き交う人々は楽しそうで、如何にも平和だ。
そう。私も、その平和な人々の一員になればいいだけ。
難しい事は無い。簡単だ。
……………でも、マフィアの幹部の兄を持つ私にとって、それは簡単ではなかった。
「兄貴の仇ぃぃぃ!!!」
人気の無い住宅街に入った途端、それは突然やってきた。
後ろから襲ってきた大柄な男。
その手には鉄パイプが握られている。
人一人簡単に殺せそうな………
『ひっ!』
危険を察知した私は、咄嗟にその場から走り出す。
足の速さには自信がある。
「兄貴の仇」とか云ってたけど、若しかして私と兄ちゃんを間違えたとか?
顔を見れば直ぐに分かる筈だが、後ろ姿はかなり似ているだろう。同じ黒コートを来ている分、余計に。
どうしよう。
この辺りはあまり来た事がないから、道が分からない。つまり、逃走経路が分からない。
応戦する?
無理無理無理。
そうだ、兄ちゃんを呼んで…………
……………矢っ張り、私、兄ちゃん居ないと何も出来ないってことじゃん。
何も出来ない、役立たずって事じゃん。
せめて、あの時みたいに…………
恐ろしい事を考えてしまった、と気付くのは、その数秒後。
でも、間に合わない。
又、何かのスイッチが入る。
───────────殺さなきゃ。
───────────私一人でも。
既に私は動いていた。
道に出て、例の男を探した。
見つけるや否や、男に接近した。
余程の恨みなのか、正気を失っている様な敵は、真っ直ぐに私に向かってくる。
敵が私に、鉄パイプを振り翳したその瞬間。
私は男の背後に回る。
云ったでしょ、スピードなら自信があるって。
勢い余った敵は、其の儘地面に転がる。
仰向けになった敵の胸の辺りを踏み付け、私は頭を掴んだ。
そして、ポケットから光る物を取り出し、それを─────
───────男の目に突き刺した。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
男は目から手を流し、痛みに耐える。
男の目に突き刺したのは、硝子。酒瓶だろうか、割れた破片が路地に転がっていた。
目を刺されて痛くない人間等居ない。
その絶叫を聞きつけ、誰かがやってくる前に、私はその場を後にした。
768人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃茶(プロフ) - 詞音さん» ありがとうございます!夜中の3時…!?ちゃんと睡眠も取ってくださいね!w (2018年4月9日 7時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
詞音 - 面白かったです!ついつい夜中の3時後まで読んでしまいましたw 他のも見ときます! お疲れ様でした。(´∀`) (2018年4月9日 3時) (レス) id: 6b5092fe94 (このIDを非表示/違反報告)
桃茶(プロフ) - 御免なさい、三十二話とあとがきが何故か消されていて……形的にはこれで終わりです!閲覧ありがとうございました! (2018年4月3日 13時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
悠爽 - 終わるんですか!?とても良い作品だったのに!でも作者さんお疲れ様でした。とても素敵な作品で面白かったです!!! (2018年4月3日 13時) (レス) id: e139e0903a (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - え・・・終わっちゃうの!?・・・・・おもしろかったです!! (2018年4月3日 12時) (レス) id: da69d52ea0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ