新しい場所 3 ページ13
「家族……ですか？」
差し出された手を取るのを躊躇する。
前を見れば夏油さんの優しい顔が見えた。悪くないかもな……なんて思って、私はその手に触れた。
ぎゅっと優しく握られて、階段を登るのをエスコートしてくれる。登り終えた時には恥ずかしさは限界を超えていて、私は手を離した。
「夏油さま！」
ボーッとしていたら、お寺の入口から2人の女の子が、夏油さんに向かって嬉しいそうに手を振っていた。夏油さんもその子達に向かって手を振り返す。
こっちまで走ってくると、後ろにいた私に気づく。
「新しい家族だよ。2人とも自己紹介してあげて」
「私は菜々子。こっちは双子の美々子」
どうやら新しい私のことをよく思っていないようで、2人は無愛想に答えた。美々子ちゃんは、私に向かって小さくお辞儀をして、菜々子ちゃんの手を握りしめた。
「それじゃあ中に入って、いろいろ話をしよっか」
夏油さんを先導にその後をついていく私。後ろには2人がいる。案内され他より少し小さい部屋の襖の前で「2人は入っちゃだめだよ」と私だけを部屋の中へ通す。
2人の顔は「どうして？」と言ってるような、納得出来ない表情だった。
「ごめんね。2人とも警戒心が強くてね。でもきっとAならすぐに仲良くなれるよ」
ちゃぶ台を挟んで向かい合わせに座る夏油さんは、私にお茶を渡してくれる。
「そうだといいんですけど……」
お茶を1口飲む。
「大丈夫だって。それで本題なんだけど、とりあえず簡単な事だけ言うね。私達は宗教仲間というより家族なんだ。このお寺はそのすみか、我が家さ。君も家族の一員となった今は、君の家でもあるんだよ」
「つまり……？」
「衣食住すべてタダさ」
人生でこんなにも美味しい話を聞いたことがあるだろうか。思わず胸が高鳴る。が、ここは冷静でいることが大事だ。
「その変わり、何かしなくてはいけないんですよね……？」
「そうだね。その内容は儀式をした後に教えるよ。儀式と言ってもこれは適正テストなんだ。君に相応しい役目を見つけるためのね」
適正テスト……なにか専門的な技術が問われるのだろうか。何をやっても平々凡々な私にピッタリなのがあるといいんだけど……
「じゃあ、早速行こっか」
「え？もうですか」
「そうだよ」
急いで席を立つ。部屋を出ると同時に布に包まれた何かを貰う。
「あっ……あの、ここここれ」
「見てのおり短剣。貴重な物だから壊さないようにね」
「へ？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 79人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
食べられた?(プロフ) - あ ま ね 。さん» 初めまして〜！ありがとうございます。嬉しいです(*^^*)パパ黒良いですね。私もそう呼ぼうと思います☆ (2021年2月2日 14時) (
レス) id: 5628ab8247 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - はじめまして！！挿絵素敵すぎます(>_<)私は甚爾さんのことパパ黒って呼んでます~! 更新楽しみにしてます！ (2021年2月1日 11時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：食べられた? | 作成日時：2021年1月27日 17時
