検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:11,558 hit

伍伍 忘れもの ページ8

「総悟さん早く乗ってください!!自慢のMy carに」


もちろんリアカーです。


「これは人間の乗るものじゃねーや。あっ、悪ィあんたは例外でしたねィ」

「そんなに嫌なら土方さんに送ってもらえば良かったのに…」


土方さんが病院まで送ってくれるという、せっかくの厚意をこの人は断った。
具合は良くなったから病人扱いしないでくれと。いやいや間違わないで欲しい一応病人だから。

何も言わずに門の方へと歩き出した彼の背中を追う。
曇天の空は私の心を映したかのようだ。
……寂しいなんて。
今日の彼は普通の袴姿に剣は差していない。短剣は持っているらしいが。




「休憩しやせんかィ?」

「これじゃあまるでいつもの見廻りじゃないですか!!」

「それでいいんでさァ」


何がいいんだよ!
そう心の中でツッこんだが、口に出さなかったのは本当は嬉しかったから。
いつもの定位置、公園のベンチに腰をかけた。
会話が何も始まらないまま時間だけが過ぎていく。
言いたいこと、話したいことはたくさんあるのに。

泣き出しそうな空を仰ぎ、早く病院に行きましょうと声をかけて立ち上がろうとした。



「…どうかしました?」

「お前ィの忘れもんを届けに来たんだ」

「えっ?」




降り出した雨は次第に強くなり、地面に打ちつける。
何も聞き返せなくなったのはあまりにも真剣な眼差しで、一点の迷いもない瞳で見つめられたから。



「俺はずっとあんたのこと覚えてた」




辺りが一度、パッと明るくなる。まるで初めてこの世界に来た日のように。
次の瞬間、大地を切り裂くかのように響いた雷鳴。



『沖田総悟をこの世から消せ』


思い出してしまえば、その命令からはもう逃れることはできない。


「…早く逃げて……」

「嫌でさァ。逃げたら負けって勝負だろィ?」

「…私はあなたを……」



沖田から簡単に…いや、男の方が何も抵抗しなかった。短剣を奪った女は切っ先を男に向けた。



「手、震えてますぜィ?そんなんで俺は殺せねェよ」

「…ごめんなさい…」



女は男に向けていた剣先を自分の首に向けた。

だが次の瞬間、雨に混ざった血は私のものではなかった。彼は自嘲じみた笑みを浮かべると私にもたれかかるようにして倒れ込んだ。
地面に落ちた短剣は赤く染まっていた。



「…総悟さ……あ…」

「久しぶりだね」



私の側にいてくれた人は私を嫌い離れていく。
大好きと言う言葉さえ、大嫌いに変わる。

でも…あなたが私を変えてくれたから。

伍陸 死神→←伍肆 桜の花言葉



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (17 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
46人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 真選組 , 沖田総悟   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:千の歌を歌う人 | 作成日時:2019年9月8日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。