肆伍 長い物語 ページ46
手術室前には、真選組隊員が深刻な表情で待機している。すると、赤いランプが消えた。中から出てきた医者は落ち着かせるようにゆっくりと語り出す。
「呼吸はあります。ですが、非常に危険な状態なのは、理解しておいてください」
医者は、ご家族はなるべく早くいらっしゃるようにと加えた。
だが、彼の家族はもうこの世にいない。
表情にこそ出さないが、それが18歳の少年の心を締め付けていることは確かだ。
両親の死にはある天人が関係していた。
それを知った時、彼は一体どうするだろうか。自分の人生を大きく狂わせた人物。
『どうして生きてるんだろうね』
彼の意識の中で響いた声。
________
病院の前で足を止める。
ギュッと自分の手に力が入るのが分かる。
二人はそれに答えるかのようにさらに強く、握り返される。もう逃げないって決めたんだ。
「お前らなんでここに?!俺は…健康診断だよ。高血圧だってさぁ…参っちゃうよ」
「土方さん、私達には隠さなくていいんです。私達はもう知っていますから」
このことは隠すつもりなのだろう。
幕府からの命令でもあるはず。一番隊隊長がいないことがバレてしまえば、反幕府勢力の勢いが一気に増すのは確かだから。
全て隠蔽しようとしてる。表向きは沖田総悟のあれは、ただの気絶だので済まそうとしてるんだろう。
案内されたのは普通の病室がある階ではなく、普通の人は立ち入れない上階。
その廊下の奥には、ドラマでしか見たことのない集中治療室があった。その中には人工呼吸器に繋がれて、顔のほぼを包帯に巻かれた…総悟さんがいた。
声も届かない、暗い場所。
でも冷たくなんてない、寂しくなんてないんだよ。
たくさんの隊士が頑張れ、頑張れ、と声をかけているから。
…独りじゃないんだよ、待ってるから。みんなが
いつもの場所で。
そして時間は過ぎ、私は一人、部屋の前の廊下のベンチに座っていた。
一枚の紙を強く握りしめて、決心を決める。
私は、もう二度と総悟さんと笑い合うことは叶わないかもしれない。
だけど大丈夫。
みんなが私にくれたものがあるから。
悔いなんて一つもない。
でも、望むなら……もう一度だけほんの少しだっていい。向き合って、話したかった。
…忘れ形見に声を、笑顔を見たかった。
「嬢ちゃん。まだ居たのかい?早く寝ないとお肌の敵だよー。健康にも悪いし」
「……夜中にパフェ食べてる人に言われたくない言葉ですね…私、決めたんです。自分の道を自分で」
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です!!すごく嬉しいです!頑張ります!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です!主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです!!頑張ります! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい! (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれの | 作成日時:2019年7月24日 22時