世界が回るとき〜Kei.Inoo〜

光side ページ20

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イライラがたまっていく。






練習のときはダメダメだったのに、なぜ本番になると完璧なんだ。





リンクの中央で回る彼は、いつもよりは回転が遅いけども、誰よりも存在感も技術もある。



今、男子では彼しかビールマンスピンはできない。






「さすがだな……」





隣にいた、薮はつぶやいた。




薮も、もう彼の世界に引き込まれていた。





ジャンプはミスが目立つけど、それ以外は完璧。




俺はまた、2位の世界を見ることになるんだ。







多分、彼は俺が靴に細工をしたことを気づいている。






俺は、もうこの世界にいることはできない。





きっと彼は、俺のことを言う。





だが、その前に自分で言う。






もう、息が苦しい。





せめて、妹や弟の前ではかっこいい兄でいたい。






彼は最終滑走。





俺の表彰台は決まっている。2位。








・








チャン





ピアノの音が止まり、彼の儚い滑りは終わりを告げる。




彼の世界は、終わりを告げた。







うわー！！！！





会場が、熱気に湧いた。





スタンディングオーベーション







その中心にいる彼の体が、崩れていった。

裕翔side→←大貴side

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