世界が回るとき〜Kei.Inoo〜

涼介side ページ18

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さっきから、慧くんがおかしい。






最終滑走の俺たちは、演技前の最終練習になった。







リンクに上がるまでの歩き方もどこかぎこちなかったんだけど、滑りはもっとおかしい。




いつもなら跳べるジャンプが、全く決まらない。





さっきら、たくさんこけている。






『選手の皆さんは、リンクに上がってください。』




アナウンスが流れた。





誰がどう見ても、慧くんはおかしい。








リンクに上がって、俺は真っ先に慧くんの所に向かった。







「慧くん、大丈夫？」





「ちょっと、調子悪いみたい。」





そう言って、ニコッと微笑んだ。







でもね、俺は知ってるよ。辛いときほど、慧くんは笑うって。





だって、今だって、瞳の奥は不安そうに揺れている。





「どうしよう。お母さんに怒られちゃうよ。」




そう言って、顔を歪めた。





慧くんのお母さんには、一度会ったことがある。




すごく優しかったけど、試合が終わったあとに、慧くんのほっぺを叩いているのを見た。そのときの試合は、慧くんが準優勝だった。









「どうしよう……」









その不安そうな顔を、俺は笑顔にすることもできない。

大貴side→←慧side

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