俺とこーた (ページ11)

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薮の舞台の千秋楽は大盛況に終わった

" ミュージカル "

伸びやかで、体の芯まで響く声

同じグループに所属する薮の声だとは思えない程

それはそれは綺麗だった

「お疲れ様」

「ありがとう、そちらこそ6回もお疲れ様」

「いやいやブログで公表しちゃったし、いっかな〜って

ぁ、この後打ち上げだろ？取り敢えずブログ用の写真撮ってくんね？」

「あぁいいよいいよ、じゃあマネ呼んでこようか？」

「よろしく」

マネージャーを呼んできて、俺の携帯を手渡した

「はい行きます〜、はいっチーズ…どうです？」

「ありがとうございます、大丈夫です

じゃあ近日中に上げとくね」

「その写真あとで送れよ」

「おぉ、分かった」

そこで薮とは別れを告げて、自分の車で帰る

車内では運がいいのか、シャッフルで当たった " 流星の詩 " が流れ出した

「ふんふ〜ふふんふふ〜ふふ〜ふふふ〜ふ〜」

何故だがこの車でシャッフルにしていてよく流れる薮のソロ曲

コイツもこの曲、気に入っているのだろうか

「奇遇だな、俺もだ」

そんな感傷に浸っていると、助手席が少し煙たくなった

「光！おっつかれ！」

「お前家以外でも出てくるのかよ…」

「まさか本当に6回行くなんてね」

「面白かったからつい、

舞台終わったし、オフの日が多かったからね」

「でも、薮に挨拶行ったのって、今日合わせて2.3回だけだったよね？」

「ん、そうだね」

「でも、ちゃっかり気付かれちゃってるねぇ、薮に」

「うっせぇ馬鹿」

「耳、赤いけど？」

「んなっ…！」

「やっぱ好きなんだあ〜？？」

「ちげぇし！ずっと言ってるけどそれだけはねぇ！！」

「むぅ…、そろそろ言っちゃえばいいのに！」

「うるせぇなアホ」

「アホとか可愛くない言葉使わない」

「っ、！！」

「俺、これでも薮の化身？だからね！」

「うるさい」

「ほらまたぁ〜？」

「まじ殴るぞ？」

「車運転してるの！ちゃんとして！」

「……っ、家帰ってまじ覚えとけよ」

「いいもんね〜だっ！俺消えるだけぇ」

と言うとまた煙たくなって、ちび薮が消えた

いつの間にか先程赤で止まったはずの信号は緑で、後ろからクラクションの音が響いた

" 若葉の時代駆け抜けた僕らも "

いつの間にか薮のソロからそのアルバムの中盤の曲に変わる

昔は…今も、一生懸命で自分の気持ちに嘘を付くなんて容易いことで

…だからって、薮のこと………