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第47話 中原中也 ページ5

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「予想通りなら今頃彼方も......」

頃合いかしら。ふと自身を拘束している手錠に目をやる。試しに鈍りきった腕を少し動かしてみると、やはりじゃらじゃらといやらしい音が鳴った。
太宰の予想が正しければ、今頃芥川が敦に接触している頃だろう。けれども、既に敦が捕まってしまっているという可能性も極めて高い。彼は行動に移すのが誰よりも早いのだから。

「相変わらず悪巧みかァ、太宰!」

不意に聞こえた、懐かしい声。......この声はっ。
4年ぶりだろうか。彼の声をこうして耳にするのは。懐かしさのあまりお耳が実に喜ばしい、今すぐにでも彼に抱きつきたい、と云えば嘘になる。断じて嬉しさの欠片もない。そんな太宰の心情を知ってか知らずか、男は靴音を鳴らして徐々に太宰との距離を縮めていった。

「こりゃ最高の眺めだ、百億の名画にも優るぜ」

それはいくらなんでも云い過ぎだ。

「最悪。うわっ最悪」

「良い反応してくれるじゃないか。嬉しくて縊り殺したくなる」

彼は――ポートマフィア五大幹部が一人、中原中也。
太宰がまだ横浜の闇を取り仕切るポートマフィアに所属していた時代。其の頃の彼は太宰と同じ幹部という階段ではなかった筈なのだが、ここ4年で急成長を遂げたらしい。元よりこの男が能力に恵まれている実力者であるのは確かだ。認めたくないけど。

「わあ、黒くてちっちゃい人がなんか喋ってる」

「ちまっ!?」

しかし、相変わらず身長は変わらないようで。

「前から疑問だったんだけど、その恥ずかしい帽子どこで購うのよ?」

「言ってろよ放浪者。いい年こいてまだ自 殺がどうとか云ってんだろどうせ」

「ええ」

「否定する気配くらい見せろよ......」

駄べっている間にも、とうとう彼が目の前まで来てしまった。あーやだやだ...…。否、待ちくたびれたと云うべきか。此処で中也に会えたのは偶然、奇跡、はたまた運命でもない。太宰がそう仕向けたのだから。

「だが今や手前は悲しき虜囚、泣けるなァ太宰。否、それを通り越して少し怪しいぜ」

第48話 俺と戦え→←第46話 強い憎悪



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美穂 - 続き気になります。更新頑張ってください!(^^)d (2020年5月13日 1時) (レス) id: f7b3d5ed55 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 文ストだぁぁぁぁ! (2020年4月9日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
水姫 - 凄い面白いです !中也が好きなので楽しみですーーー!!ハマりました (2019年9月16日 22時) (レス) id: c8e9b80948 (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - ふぅぁぁぁああぁあ!!!!好きだああああああ!何これ最高!!これは芥川さんオチなんですか!?!????!!!!! (2019年1月12日 0時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 面白かったです^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月24日 2時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パティー | 作成日時:2016年7月22日 12時

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