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第二十二話 ページ22

そしてこう言われた。




『俺にとって、雅貴は可愛い女の子かもしれないぜ?』




は・・・女の子?

俺が?

もう30のおじさんだぞ

いや、流石に比喩か

可愛い女の子・・・


この時の俺の顔は多分、もの凄く間抜けだったと思う。

そして、気がつけば弓雅に唇をなぞられていた。

驚いて少し上にある弓雅の顔を覗く。顔こそは無表情だったが、目の奥が愉しそうに笑っている気がし、ただの勘だが、これ以上はマズイと思った。




「はぁ・・・」



溜息を付きながら、弓雅の肩を押して離れさせる。



「大人を揶揄うな」




そう言って弓雅の頭に手をのばす。


少し前までは腰辺りまでしか身長がなかったのに今ではもう目線の高さが同じだ。

息子の成長が早い・・・と軽く感傷に浸っていたが、パシッという手を振り払われた音と、




『うるせェ』




と低く唸るような声で手を引っ込める。




『森岡先生、体調不良のため今日はもう帰ります』


「あ、あぁ。じゃが・・・」

『あーあー

 熱が出てきたかもなー雅貴がいて驚いたからかもなー雅貴のせいかもなー』



俺と森岡先生との態度の差に心を痛めていたが、弓雅の子供らしい一面を見て少し和らぐ。そして、もう一度弓雅と向き合おうかと思えてくる。



「弓雅ー、今日は家に帰って来いよー!」

『はァ?絶対嫌だ!』


予想通り断られた。

弓雅が断るのは予想通りだが、今日は折れてやらない。



「・・・そうか。でも、今日帰らなかったら二度と家に入らせないからな」



向き合うと決めたんだ。多少強引でも家に帰らせる。



『脅しか?』

「失礼だな・・・。交渉と言ってくれ」



これで弓雅は今日、帰ってくる筈だ。

その安心感と今まで何故こうしなかったんだという自責の念からか、ホッとしたように、それでいて自虐的に笑った。

まぁ、今までこの方法を取らなかった理由は分かっているんだけどな・・・。



『チッ』



弓雅は舌打ちを一つ残して帰っていった。








「ふぅ」


それからどれくらい経っただろうか。

俺が深呼吸をしたことがきっかけに、今まで空気と化していた部員たちがざわめき出す。



「修羅場を見せて悪かったな。

 それじゃ、気を取り直して練習開始だ!」


「「ハァァァアア!?」」

「いやいや、それは流石に無理があるっしょ」

「弓雅とのこと、説明して頂きたいのですが」


七緒は苦笑いで、静弥は怖いほどの笑顔を浮かべてそう言った。

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作者名:カル | 作成日時:2023年3月12日 22時

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