第十三話 ページ13
「湊!&静弥!&弓雅ー!」
チャイムと同時に、遼平が湊たちの教室に駆け込んできた。
「セット扱いはやめろよな」
「あと、弓雅は先に言ったよ」
遼平は、湊がいることにパァァアと満面の笑みを浮かべたが、
静弥の言葉でガックリと残念そうに肩を落とした。
「え?今日俺的当番だっけ?」
「えぇ」
「ごめん!じゃあ、今からーー」
「もう滝川くんが、全部付けちゃったよ」
「滝川ー!メッハー!的付けは滝川がしてくれたんだ。サンキュー!」
『別に・・・。早く弓を引きたかったから』
「わぉ。クール」
『それより、めっはーって何』
「あ、メルハバの略。トルコ語でこんにちはって意味。ちょっといいっしょ?」
『・・・・・』
少し得意そうに語った七緒を、弓雅はなぜトルコ語なんだと思ったが口には出さず、無言で見つめる。所謂ガン見だ。
「ほら、滝川もそんなしかめっ面しないで、please after me メッハー」
『・・・・・』
繰り返すように言うが、弓雅は相変わらず変わったものを見るような目で七緒を見つめた。しかし、身長差と弓雅が無表情のせいか、不機嫌そうに見下ろしているようにしか見えない。
「滝川くん、如月くんの相手なんてしなくていいから」
その微妙な空気に見兼ねたのか、花沢が声を掛ける。
「弓道女子はツンデレが多いなぁ。ま、そこがいいんだけどね」
「如月くんにデレるわけないじゃん」
七緒の言葉に対し、花沢が心底おかしそうに笑いながら言う。
「そうですわね。あなたなんて妹尾の足元にも及びませんわ」
「仲良くしようよ!たった9人ぽっちの部なんだし!」
「たったって言いますが、ここまで減ったの誰のせいだと思ってるんですか?」
ビシッと指を指して花沢が勢い良く言う。
たしかに、退部を申し出た者の理由に、七緒のファンのせいと言えるものは多かった。他にも、海斗と弓雅が怖い、などなど。
「最近の若者は堪え性がないよね。困ったもんだ」
「俺のせいかよ」
弓を張っていた海斗がふてくされたように口を挟む。
『それは違ぇ。どうせあんなヤツら、すぐに辞める。俺たちは言い訳に使われただけだ』
弓雅は少し怒ったように、キッパリと言い切った。
「・・・そうだな」
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作者名:カル | 作成日時:2023年3月12日 22時