僕はまだ ページ33
ちょっとした後日談のお話
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いつものリストランテ。
嗚呼今日は君かと目の前の人物を一瞥した後手元にある空の皿に視線を落とした。
「なぁ、フーゴ」
そいつは出鱈目な計算式が書かれたノートに視線を向けたまま続ける。
「お前いつこっち来るんだよ」
空の皿にフォークを突き立てそのまま聞こえないふりを続ける。
「なぁ、フーゴ。
どうして俺達を裏切ったんだよ」
「っ!そんなつもりは...っ!」
「一人生き延びてどんな気持ちだった?
なぁ、教えてくれよ俺馬鹿だからさぁ」
「次は裏切ったりなんかしないっ!」
「次っていつだよ、俺達に次なんてねぇんだよ」
はっと顔をあげればいつの間にかリストランテから見知らぬ暗闇に立っていた。
目の前には三人並んで僕を睨んでいる。
「違う...僕は、僕は...」
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「____...っ!」
急激に引っ張られる感覚、その直後汗だくの体への嫌悪感。
ベットから上半身のみを起こしきつく握り締めていたシーツを放す。
隣で安らかに眠っている彼女を見て、そして嗚呼こっちが現実だと実感する。
まだ薄暗い時間帯だ。またかと顔を覆った。
洗面所へ向かい顔を乱雑に洗う。
この悪夢に苛まれるようになったのはつい最近、Aと共に過ごす様になった直後だ。
当然現実では幸せだ。この上なく。
何の不満もない。
だが夢では別だ。
毎日毎日ブチャラティ、ナランチャ、アバッキオに弾糾される。
鏡に映る僕はとても酷い顔だ。
蛇口を捻り水を止めた。
寝不足による頭痛と怠けを抑え込み台所で朝食の用意をする。
出来上がった頃は丁度いい時間帯だ。
Aに口付けをし起こす。
「おはようA」
「おはようパニー。...どうしたの、酷い顔だよ?」
「っ!...気のせいだ」
遂に悟られ始めたと思わず顔を逸らす。
一方の彼女は「無理しないでね」と釘を指し洗面所へ向かった。
夜が怖い。
眠るのが怖くなった。
罪悪感による悪夢だとはわかっている。
だが分かったところでなんの解決にならない。
今日は何をするかと朝食を食べながら彼女と話す。
『お前いつこっち来るんだよ』
まだ行けない
行けないんだ。
ごめんナランチャ。ブチャラティ、アバッキオ。
けど僕は皆にちゃんと謝りたい。
ごめん、皆。
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鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼ&チェリーさん» そんなッ!あなたがッ!!大好きですッ!!!(告白)ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです! (2019年8月25日 16時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー - もう!本当に!!どうしてこんなに素敵なお話が書けるんですか!?好きです!(テンション) (2019年8月25日 9時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼさん» 読んでいただきありがとうございます!是非ごゆっくりしていってください! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - 暇を持て余した夢女さん» とっても素敵な表現ありがとうございます...!こちらこそ幸せです!また機会がございましたらその時はよろしくお願いします! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 次から次へと呼んでしまいます。気づいたら1時間ぐらい経ってました。 (2019年8月22日 15時) (レス) id: 5e7806b95a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年8月4日 19時