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前もって連絡を入れた後合鍵でAの家に入る。
彼女はアトリエで立ち竦んでいた。
「ボナセーラ...A?」
「っ!ボナセーラフーゴ」
どこか笑顔が引き攣って見える。
...気のせいか?
「...あ、そうだ珈琲淹れるよ。
クッキーも買ってきてあるの」
「グラッツェ。...何かあったのか?」
「まさか、何も無いよ」
アトリエの前で靴を履きキッチンへ向かう彼女を追いかける。
そのキッチンはアンティークな白い家具があるリビングと繋がっている。
テレビの前のローテーブルに言われた場所からクッキーを出し置く。
すれ違いざま彼女の指を観察した。
僕の小指より少し細い位の太さだな。
Aは珈琲を二杯淹れ持ってきた。
「グラッツェ」
「...あのさ、フーゴ」
やっぱり何かあったのか?
「もし私に不満とかあったら遠慮なく言ってよ?私鈍感だからさ」
「?、ええ」
不満?ある訳ないだろう。
強いて言うなら寝室で寝てくれと言うことぐらいか。
けど何故急にそんな事を。
「...毎朝迷惑かけてごめんね」
「迷惑...?そんな訳ないじゃないか」
「ごめん...」
やっぱりおかしい。
思わず肩を掴みこちらを向かせた。
微かに湿った瞳と目が合う。
「はっきり言ってくれないか。
なにがあった?」
「何も無いってば」
カッと血が登りはんば怒鳴りつけるように言う。
「何も無いわけないだろ!?
言ってくれ、僕はそんなに頼りないのか!?」
「言ったって何も解決しないじゃないッ!!」
はっとAが息を詰まらせた。
しまったと言いたげな顔が真っ青に塗り変わる。
「...そうだね」
「ち、違っ」
「怒鳴ってすまない、今日は帰るよ」
「待って!」
前にもこんな事があった気がする。
そう思いながらカバンを掴んだ。
嗚呼彼女が淹れる珈琲は好きなんだけどな、今は飲む気分じゃあない。
「フーゴ私を嫌いにならないで...」
その言葉を背中に受け止めながら家を出た。
何か混乱しているみたいだ。
とにかく今は下手に刺激をしない方がいいだろう。
また明日の朝少し早めに行って話し合おう。
指の太さもわかったんだ。
また明日、きちんと自分の考えを伝えて__
____...
合鍵で扉を開ける。
寝室にいなかった。
嗚呼またかとアトリエへ向かう。
居なかった。どこにも。
「...A?」
突然姿を消した。
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鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼ&チェリーさん» そんなッ!あなたがッ!!大好きですッ!!!(告白)ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです! (2019年8月25日 16時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー - もう!本当に!!どうしてこんなに素敵なお話が書けるんですか!?好きです!(テンション) (2019年8月25日 9時) (レス) id: ced51d468f (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - さくらんぼさん» 読んでいただきありがとうございます!是非ごゆっくりしていってください! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - 暇を持て余した夢女さん» とっても素敵な表現ありがとうございます...!こちらこそ幸せです!また機会がございましたらその時はよろしくお願いします! (2019年8月22日 20時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ - 次から次へと呼んでしまいます。気づいたら1時間ぐらい経ってました。 (2019年8月22日 15時) (レス) id: 5e7806b95a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年8月4日 19時