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「ここからはもう一人で大丈夫だな?」
「うん、ありがとうナランチャ君」
彼はどこかソワソワと視線を泳がせる。
「あのさ」
「うん?」
「明日すぐそこの公園いるからさ、さっきの話が本当に良いなら来てくれよ!」
「うん、わかった!」
Ciaoと手を振りその場で別れる。
まだ慣れない家のドアに鍵を差し込んだ。
親は基本家にいない。仕事の都合ってやつだ。
ドアを開け照明をつけるがどこか薄暗く感じる。
ただいまと思わず日本語で言ってしまった。
表現し難い生々しい寒気が足から少しづつ這い上がってきているかのようだ。
慌てて靴を脱ぎ散らかし本をテーブルにおいてチャンネルを掴んだ。
適当に付けたドラマを流し冷蔵庫へ向かう。
ほとんど何も無いが何も食べないよりはましだ。
パンにハムを適当に挟み真っ二つに切る。
引越し祝いで由花子さんに貰ったマグにオレンジジュースを乱雑に注いだ。
そのままテレビの前のテーブルに腰掛けた。
一口齧りうーんと首を傾げる。
チーズも挟めば良かったかもしれない。
そうだ明日ナランチャ君に会えたらおすすめのお店でも聞こうかな。
と、ここまで考えてはたと思考が凍る。
先ほどの銃声に手馴れた逃走。そして使い込まれたナイフ。
チンピラだろうか。
だとしても彼には似合わない気もするが。
オレンジジュースを一気に飲み干す。
彼はまさにオレンジみたいな人だった。
太陽と柑橘系の香りに微かに混じった汗の匂い。
ドラマは終盤に迫っていた。
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『それってギャングじゃねぇーか!!』
キンっと耳鳴りを覚え受話器を遠ざける。
国際電話で仗助にかけてみて相談したはいいが突然の大声。鼓膜破れるんだけど。
「ギャングって何?」
『マフィアみたいなやつだよ。大丈夫かよお前早速巻き込まれてんじゃねーか』
「あはは面目ない」
私はビックリするくらい昔から不幸体質だ。
杜王町で由花子さんに勘違いされるわ殺人犯に巻き込まれるわ...。
「まじすか」
『大丈夫かよ本当に』
私は所謂“スタンド”とかは無い。
なのでひたすら足を引っ張る迷惑員だった。
「まぁ何とかなるよ」
『そういう所なんだよなぁ...不安しかねぇよ...』
「大丈夫だよ仗助。なんか声が聞けて楽になったよ。ありがと」
『どー致しまして。本っ当に気をつけろよ!?』
そう言って電話は切れた。
また例えようのない暗闇が背中に重くのしかかってきた。
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ぱ - ほんとに...ナランチャ...いやほんとにいい話でしたほんんとにありがとうございます...!!!!! (2月20日 23時) (レス) @page26 id: d599ec02c4 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - こんなに泣くとは思わなかった…すごく、素晴らしい作品です (2022年7月26日 13時) (レス) @page47 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
れい - 顔がぐちゃぐちゃになりました...本当にいいお話で、すごかったです!(語彙力なくてすみません)このような作品を読ませて頂いてありがとうございます!この作品に出会えてよかったと本当に思います...二人が本当に幸せになれるように祈ります...(長文失礼しました) (2021年7月24日 0時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
青 - 号泣しました…。目擦りすぎて睫毛ぼろぼろ抜けました。私の持ち得る限りの語彙力を総動員しても、この素敵な作品の尊さを表現し尽くすことはできないかもしれません…。本当にこの作品と出会えて良かったです。全細胞がディモールトベネ!と喜んでます…… (2021年3月22日 4時) (レス) id: fc7ac22f29 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - イスカさん» ありがとうございます!しかも他の作品まで...!圧倒的感謝です!!これからも精進して参ります! (2019年9月27日 22時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年6月30日 22時