【ジョジョ5部】拝啓、星月夜の落ちる空へ【ナランチャ】

或る歌手の話 ページ35

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彼とはとても馬が合ったわ。



私が気付いていなかった自らの感情もいち早く察してくれた。



そんな彼が一度だけ愛した女性の話をしてくれた事がある。


サルディニア島に向うジェットの中、スタンド攻撃を受けるまでの少しの間の出来事だったわ。



ナランチャが写真の女性の頬を指でなぞっているのをたまたま見かけたの。



その人は誰？と思わず聞いたわ。
だって見るからに東洋の人だったもの。

どういう繋がりか気になるじゃない。


するとナランチャは少し寂しげに眉尻を下げて「俺の恋人」と短く答えた。



今頃何をしているんだろうなぁ...とボヤく彼の表情には微かな罪悪感が見て取れた。



何をしている、それは詰まり今彼女は無事かどうかを案じて出た言葉だった。



彼は組織を裏切った。

そして写真の女性はその恋人。



何が起こるかなんて容易に想像がつく。



私も彼と一緒に無事を祈ったわ。

その後すぐにそれどころじゃなくなったけどね。



コロッセオで最後まで守ると言ってくれた時本当に嬉しかったのよ。



そしてその後呆気なく亡くなってしまった時は頭が真っ白になったわ。




起きてよナランチャ。
ねぇ、守るって言ったじゃない。




ナランチャってば




故郷の彼女はどうするのよって。




抗争が終わった後、私達はナランチャの遺体を回収した。

その時ジョルノが写真を抜き取るのを見て思わず少しだけ見せてと頼んだの。



一枚一枚見たわ。



ジェラートを食べる彼女、眠る彼女、逆光の中眩しげに笑う彼女、木漏れ日の下本を読む彼女...


一つ一つ表情が違う。
どれも幸せに満ちた写真だった。



だから私は今とても嬉しいのよ。



肉体を失ったとはいえこうして平和な時を過ごせている事が。



二人がまた共に過ごせる事が、私はとても嬉しい。



ちなみに私あなたに歌をプロデュースしてもらったことがあるのよ。



顔を見た時驚いたわ。

ああ、貴方なのねって思わず泣きそうになった。



あの時はどうもありがとう。

とても素敵な曲だったわ。




さっ、次は誰が話すの？
私は思いを伝えれてスッキリしたわ！




時間はいくらでもある。




だから偶にはこういう事も悪くは無いかもね。

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