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眩しいくらいの鮮血が目の前に舞い上がった。
「見るんじゃあねぇ!目を閉じろっ」
その声に咄嗟に従い目を瞑り耳を塞ぐ。
それでも聞こえてくる怒声と銃声、肌に当たる水気にすっかり腰が抜け座り込んだ。
「女の子一人に寄って集るってよォ、卑怯何じゃあねぇの?」
その言葉に視界が霞む。
薄く目を開け様子を伺おうとした。
「おっと、見ねぇほうがいいぜ!ほらこっち、はやくっ!」
パシッと手を掴まれ無理やり立たされる。
ゴツゴツした手のひらが私の視界を隠した。
かける足は心做しか軽くて後ろの男の咆哮も先程よりは怖くなかった。
「それにしてもよぉ、なんであんな所に居たんだよ」
視界が開け手が離される。
礼と投げかけられた問いに答えようとしてようやく顔を上げた。
「あの、助けてくださりありがとうございました。えーと...、...?」
銃って、イタリア語でなんて言うんだろう。
訝しげにこっちを見る彼に私はジェスチャーで伝えようと奮闘する。
私より少し大きい彼はサラサラの髪を揺らし首を傾げる。
長いまつ毛が目元に影を落としていたがあっという声とともに持ち上がった。
「“銃声”か?」
「!、そう!それです!」
「なるほどなー。まぁ無事で何よりだぜ」
そう言って彼は私の手元に視線を落とした。
「本?」
「語学の本です。まだ来たばかりで...」
「中国?」
「日本です」
近所の仗助さんや仲良くして下さったそのご友人方は私の旅立ちに驚きつつも見送ってくれた。
頑張れ、変な奴に巻き込まれるなよって。
早速巻き込まれましたごめんなさい。
近所に漫画家さんとか居たらしいが結局会えなかったのが凄く残念だった。
なんて故郷に想いを馳せていたが彼の大変そうだなって言葉に我に返った。
「家どこ?送る」
「えっ、そんな!悪いです!大丈夫ですから」
「へぇー...ここどこか分かる?」
「えっ」
視線を右に向ければ全く知らない公園。
左には知らないスーパーがあった。
見る見るうちに血の気が引く。
「...わからないです」
「家の近くに何か目印になるもんとかねーの?」
「ヴィットーリア広場...」
「分かった。あっ、これ少し持っててくれ」
「わか...」
そう言って手渡されたのはナイフだった。
私は思わず硬直する。
彼は地図を広げて百面相をしていた。
すぐに理解した。
これは怪しい動きをしたら刺すという警告だった。
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ぱ - ほんとに...ナランチャ...いやほんとにいい話でしたほんんとにありがとうございます...!!!!! (2月20日 23時) (レス) @page26 id: d599ec02c4 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - こんなに泣くとは思わなかった…すごく、素晴らしい作品です (2022年7月26日 13時) (レス) @page47 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
れい - 顔がぐちゃぐちゃになりました...本当にいいお話で、すごかったです!(語彙力なくてすみません)このような作品を読ませて頂いてありがとうございます!この作品に出会えてよかったと本当に思います...二人が本当に幸せになれるように祈ります...(長文失礼しました) (2021年7月24日 0時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
青 - 号泣しました…。目擦りすぎて睫毛ぼろぼろ抜けました。私の持ち得る限りの語彙力を総動員しても、この素敵な作品の尊さを表現し尽くすことはできないかもしれません…。本当にこの作品と出会えて良かったです。全細胞がディモールトベネ!と喜んでます…… (2021年3月22日 4時) (レス) id: fc7ac22f29 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - イスカさん» ありがとうございます!しかも他の作品まで...!圧倒的感謝です!!これからも精進して参ります! (2019年9月27日 22時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年6月30日 22時