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三月中旬、その日もナランチャと土曜日を過ごし夜は家に二人で帰った。
その日ナランチャがやけにソワソワしていて何だろうと思ってたら急に畏まって
「キス、してぇな」
なんて言うものだからいつもしているのに、と思いつつ頷いた。
とはいえ慣れないものは慣れないけど。
腰掛けていたベッドが軋む音に続き彼の腕が私に回る。
指が頬を滑りそのまま髪を掬って目を軽く伏せ顔を傾けた。
その時唐突に理解してかっと熱くなった。
「ま、まってナランチャっ!今日一日外だったし私汗臭い...!」
「いい」
「むむむムダ毛沿ってないしっ!」
「え?ムダ毛って剃るの?」
「え!?」
「え?」
またまた文化の違いに驚き合う。
そして何だか可笑しくなって互いに笑ってキスをした。
唇を啄む様に合わせそのまま頬、首筋鎖骨と降りていく。
ゆっくり押し倒され私の心臓は破裂しそうなくらい脈打っていた。
「ふはっ、緊張しすぎ」
「だって...は、初めてだし」
「えっ!?初めて!?」
何歳だよ!?という叫び声にむっとしてどーも悪ぅございましたぁーと枕をぶつけてやる。
だがナランチャは特に気にせず嬉々として私をまた抱きしめた。
息苦しくて背中を叩くと貰ってもいいかと心地よい低音の声。
いいよって答えればナランチャの手が私の体のラインをなぞった。
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朝目を覚まして真っ先に見たものはナランチャの寝顔だった。
信じられない腰の痛みに悲鳴を上げ咄嗟に距離をおこうとした瞬間重力が消え真っ逆さまにベッドからずり落ちた。
大きな音に驚いてナランチャが飛び起きおいおいおい!?と私を引っ張り上げる。
「朝から何してんだよ」
「ビックリして...てか見ないで!恥ずかしいから!」
「散々見た後なのに?」
「うるっ、う、うるさっ!うるさい!」
何がおかしいのか笑い続ける彼に布団を頭から被せ、落ちた下着を拾おうとしたら腰に回った手に引き寄せられ阻止される。
「...おーはよ」
「...おはよう」
一糸まとわぬ姿には服の下に隠されていた無数の傷痕があった。
それをつつくと擽ったいと逃げられる。
互いに服を着て玄関まで見送った。
頬にキスを落として「また来週な!」と眩しい笑顔に私も応える。
「また来週」って
眩しい光の中、手を振って消えていった姿が忘れられない。
この日の事を私は未だに夢に見る。
これが私が見た彼の最後の姿だった
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ぱ - ほんとに...ナランチャ...いやほんとにいい話でしたほんんとにありがとうございます...!!!!! (2月20日 23時) (レス) @page26 id: d599ec02c4 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - こんなに泣くとは思わなかった…すごく、素晴らしい作品です (2022年7月26日 13時) (レス) @page47 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
れい - 顔がぐちゃぐちゃになりました...本当にいいお話で、すごかったです!(語彙力なくてすみません)このような作品を読ませて頂いてありがとうございます!この作品に出会えてよかったと本当に思います...二人が本当に幸せになれるように祈ります...(長文失礼しました) (2021年7月24日 0時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
青 - 号泣しました…。目擦りすぎて睫毛ぼろぼろ抜けました。私の持ち得る限りの語彙力を総動員しても、この素敵な作品の尊さを表現し尽くすことはできないかもしれません…。本当にこの作品と出会えて良かったです。全細胞がディモールトベネ!と喜んでます…… (2021年3月22日 4時) (レス) id: fc7ac22f29 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - イスカさん» ありがとうございます!しかも他の作品まで...!圧倒的感謝です!!これからも精進して参ります! (2019年9月27日 22時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年6月30日 22時