検索窓
今日:14 hit、昨日:10 hit、合計:44,582 hit

☆13 ページ14

.





土曜の朝、枯葉を避けてベンチに腰掛ける。

母はあの後もう一度似た言葉を告げ仕事三昧に戻った。


空が心做しかどんよりと曇っていた。



「お待たせ!」



「大丈夫だよ。あっ、寝癖付いてるよ」



「えっ!嘘どこ」



ここだと伝え髪を撫でる。
その時アメジストの様な彼の瞳が私を覗き込んだ。



「何か顔色悪くね?」



「大丈夫だよ」



大丈夫じゃない


あの日から母の言葉ばかり回っている。

ナランチャはいつも裏の世界に触れさせまいと守ってくれる。

けど他人からしてみればきっと母が言うように見えるのだろう。

ナランチャはなんて言われてるのだろう。



「じゃあ行こうぜ!俺さめっちゃいいジェラートの店見つけてよぉ〜!」



「本当?すっごく楽しみ!」



午前はいつものカフェで勉強会をして午後は遊び歩く。


おすすめのジェラートのお店は気前が良くてこれでもかと大盛りにしてくれた。


いつも楽しみにしているワッフルコーンも美味しくて笑がこぼれる。


ナランチャと私のを半分食べたところで交換するのもジェラートを買った時のお約束だった。



今日は思い切って近所を散策しようと練り歩く。

と、CDショップから出て少しして突然土砂降りの雨が私達を襲った。

あまりに突然で私達は庇い合いながら咄嗟に私の家へ転がり込んだ。



「うわぁ...結構濡れたね」



「そうだな...寒っ」



「シャワー浴びてって。確かお父さんの服とかあるから準備しておく」



「ここで待ってるから先に浴びてこいよ。
俺って風邪引かないんだよね」



「でも」



「いーから!」



ありがとうと告げ急いで風呂場に向かいはたと足を止めた。

初めて彼が私の家の場所を知ったのだ。


一緒やらかしてしまったかと思ったがすぐに大丈夫かと思い直す。


本当に家を特定しようと思っていたのなら初めからそうすれば良かったんだもの。


出来るだけ急いでシャワーを浴び彼を風呂場へ押し込む。
その間に服を用意して置いておいた。



『騙されているのよ』



『ギャングってのは非人道的な奴ばかりで』



違うって何度も言い聞かせる。
ナランチャはそんな人じゃない。

そんな確証はどこにも無いけど。


自室のベッドに腰掛けぼうっとしていたらナランチャが部屋に入ってきた。

隣に腰掛け大丈夫か、体調が悪いのかと心配そうに声をかけてくる。


温もりが欲しかった。


私は彼の目を見上げあえぐように呟いた。





「今夜、私の親帰ってこないの」

☆14→←☆12



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (163 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
114人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- ほんとに...ナランチャ...いやほんとにいい話でしたほんんとにありがとうございます...!!!!! (2月20日 23時) (レス) @page26 id: d599ec02c4 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - こんなに泣くとは思わなかった…すごく、素晴らしい作品です (2022年7月26日 13時) (レス) @page47 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
れい - 顔がぐちゃぐちゃになりました...本当にいいお話で、すごかったです!(語彙力なくてすみません)このような作品を読ませて頂いてありがとうございます!この作品に出会えてよかったと本当に思います...二人が本当に幸せになれるように祈ります...(長文失礼しました) (2021年7月24日 0時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
- 号泣しました…。目擦りすぎて睫毛ぼろぼろ抜けました。私の持ち得る限りの語彙力を総動員しても、この素敵な作品の尊さを表現し尽くすことはできないかもしれません…。本当にこの作品と出会えて良かったです。全細胞がディモールトベネ!と喜んでます…… (2021年3月22日 4時) (レス) id: fc7ac22f29 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - イスカさん» ありがとうございます!しかも他の作品まで...!圧倒的感謝です!!これからも精進して参ります! (2019年9月27日 22時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年6月30日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。