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何だか空気が可笑しい。
さっきまであんなに殺伐としていたのに今はどこかナランチャをからかうような空気になっている。
どういう状況だと私は些か狼狽した。
と、思ったら突然目の前のナランチャがああもうっ!と叫んで両手を振った。
顔は林檎のように真っ赤である。
何が何だか分からない私は彼の体調のほうが心配になった程だった。
突然ナランチャがいつぞやの様に手を繋ぐ。
帽子の人が歓声を上げた。
「俺はっ!!
俺はこいつの事が好きなんだよ!!
好きだから殺したくないんだっ!!」
えっと声が漏れた。
彼はそんな私に構わずもういい!?なぁもう流石にわかっただろ!?と叫び続ける。
「え、あ、ああ...わかったがナランチャ、そんな大きな声を出さなくても...」
「わかってるけどこうしてないとなんかこう...っ、ヤバいんだよ!」
空気に耐えかねてかナランチャがこんなダッセェ伝え方するつもり無かったのに!とこれまた大声で叫んで私の腕を引き路地裏から走り出ていく。
後ろからやるじゃねぇかナランチャっ!と茶化すような声が聞こえた。
先程の噴水の所まで走り二人で腰掛ける。
心做しか距離を開けて。
「...っはぁぁぁ!くっそカッコ悪ぃ」
「さっきの事なんだけど...」
「...マジ」
両手で顔を隠しまたダッセェと項垂れる彼に私はどう声をかけたらいいのかよく分からなかった。
「あのね、私何となくナランチャがギャングだって事知ってたよ」
ギュッと膝の上に握り拳を作り私はポツポツ想いを伝える。
ナランチャは両手を外し真剣な顔を向けた。
「...知ってて一緒にいてくれたのか?」
「うん」
「なんで?」
これまた先程の人に劣らず鈍感だなと感心した。
「好きだから」
顔から火が出そうだ。
誰かに想いを伝えるとか生まれて初めてだからどう伝えたらいいのかもうよく分からない。
「知ってたけど好きだから知らないふりをしていた。
ごめん私のせいで__!」
刹那、細く筋肉質な腕が私の首に回った。
彼のサラサラな髪が首筋を撫でる。
心臓がはち切れそうだった。てかはち切れるまじで。
「ナランチャ...!?」
「...うまく伝えられねぇけどよ、すっげー嬉しい。俺今すっげー幸せだ...っ」
「...うん、私も」
彼の背中に腕を回す。
柑橘系の香りが鼻先を掠めた。
いつも寂しい時隣にいて私の行く道を照らしてくれたから。
ああ、だから好きになったんだ。
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ぱ - ほんとに...ナランチャ...いやほんとにいい話でしたほんんとにありがとうございます...!!!!! (2月20日 23時) (レス) @page26 id: d599ec02c4 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - こんなに泣くとは思わなかった…すごく、素晴らしい作品です (2022年7月26日 13時) (レス) @page47 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
れい - 顔がぐちゃぐちゃになりました...本当にいいお話で、すごかったです!(語彙力なくてすみません)このような作品を読ませて頂いてありがとうございます!この作品に出会えてよかったと本当に思います...二人が本当に幸せになれるように祈ります...(長文失礼しました) (2021年7月24日 0時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
青 - 号泣しました…。目擦りすぎて睫毛ぼろぼろ抜けました。私の持ち得る限りの語彙力を総動員しても、この素敵な作品の尊さを表現し尽くすことはできないかもしれません…。本当にこの作品と出会えて良かったです。全細胞がディモールトベネ!と喜んでます…… (2021年3月22日 4時) (レス) id: fc7ac22f29 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - イスカさん» ありがとうございます!しかも他の作品まで...!圧倒的感謝です!!これからも精進して参ります! (2019年9月27日 22時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年6月30日 22時