五頁 ページ7
・
「却説____」
太宰さんはポツリ、言葉を整った口から零した。
うつらうつらしていた私は目を開ける。
「そろそろかな」
____...ガタンッ
「っ!?」
ビクンと体が跳ねた。
心臓が口から飛び出そうである。
敦さんとほぼ同時に音がした方を見た。
そこはシン...と静まり返っている。
「今......そこで物音が!」
「そうだね」
何で淡々としてんだよおらァ!!こちとら無理矢理付き合わされほぼ空気になってンだよ!!つーか、虎に食われるとか嫌だわ!!...でも、虎はそんな所から来ないような。
「ひ、人喰い虎だ。僕を喰いに来たんだ」
「座りたまえ敦君、虎はあんな処から来ない」
「どうして判るんです!!」
「____そもそも変なんだよ敦君」
パタン、太宰さんは本を静かに閉じた。
「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ。
いや、そもそも...
経営が傾いたんなら一人二人追放したところでどうにもならない。
半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」
「え____...。太宰さんそれってまさか......敦さんは......____」
敦さんはもうこっちを見ていなかった。
見ているのは美しいお月様。
刹那、敦さんの瞳孔が縦に開いた。
「君が街に来たのが2週間前
虎が街に現れたのも2週間前」
段々頭が理解する。
『文豪ストレイドッグスってね、異能力のお話なんだよ』
友人Aの言葉が脳に響いた。
「君が鶴見川べりにいたのが四日前、同じ場所で虎が目撃されたのも四日前。
国木田君が云っていただろう。『武装探偵社』は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。
巷間には知られてないがこの世には異能の者が少なからず居る。」
敦さんの体が徐々に変化する。
背筋に嫌な汗がたれた。
「その力で成功する者もいれば__力を制御できず身を滅ぼす者もいる。
大方、施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったのだろう。」
一匹の獣が月下に姿を現す。
敦さんは居なかった。
「君だけが解っていなかったのだよ。
君も『異能の者』だ。
現身に飢獣を降ろす月下の能力者____」
敦さん____厭、虎が月に向け吠えた。
490人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
羅尓 - 久しぶりに涙が出ました。 (2021年7月26日 12時) (レス) id: 9b89cbfb6e (このIDを非表示/違反報告)
たまり - 私も名古屋です!(誰得)お話すごく好きです。応援してます! (2018年7月25日 16時) (レス) id: 7ebfe7ebc4 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - キャラがはっきりしていてとても面白いです。シリアスなテンションの話なのに不思議とサクサク読めました。これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 22時) (レス) id: 4e46b846c9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 名古屋の方なんですね!私も名古屋人なんですよ!←で? 凄く面白いです!頑張ってください (2017年12月28日 13時) (レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
庵(プロフ) - 読んでいて凄くワクワクしました!凄く面白かったです、早く続きが見たくて仕方ないです。更新楽しみにしてます(*'v'*) (2017年10月11日 12時) (レス) id: 80af1d3c01 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2016年7月26日 22時