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三十六頁 ページ38

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「ち_」



舌打ちの音が鼓膜を揺すった。
体が自由になる。
私は立ち上がり中也と何も言わずビルの地下へ向かう。


カンカンと靴底が地下の空気を震わせた。

懐かしい拷問室への地下通路、場違いにも懐かしくて笑が零れた。

一番奥の部屋の前で中也は止まる。



「...テメェは」



ドアノブに手をかけ、振り返らず彼はつぶやくように言った。



「引き留めようとかは思わねェのかよ」



「そりゃあ思うよ。

けど彼女の幸せが違うところにあるのならば、私はAちゃんの手を離すよ」



「...そうかよ」



そしてドアノブを回そうとした刹那、








____絹を割くような甲高い悲鳴一つ、後にそれを遮るような銃声三つ



「っ!?」



はんば中也を押し退ける形で部屋へ突入した。


鉄臭い臭い、赤黒い液体がコンクリートの地面に付着している。

それはまだ真新しく微かな光を表面で踊らせていた。



「Aちゃん...!!」


部屋の中央に倒れている人物を抱き上げる。
あの独特の温もりがべチャリと手のひらを染め上げた。

腹から大量の血液が溢れ出す。



「...だ......ざ、ぃさ...?」



「Aちゃん!!」



「おい!!誰だァ捕虜を撃った奴は!!」





「____...私」



部屋の影から人物が現れた。

その足元には沢山のマフィアの...死体。



その人はあちこちに生傷を拵え、腕に包帯を巻いた____



「秋、吉ちゃん...」



目を見張った。
中也も驚きのあまり目を見開き硬直している。



「...中原さん、私の異能でも人助けは出来ると思ったのです」



彼女の頬に何かが伝う。



「助けてと叫ぶ彼女を助けたくて、拷問班達にやめて欲しいと懇願しました。

しかし彼らは私の異能どころか、私自身を知らなかったらしく、別室へ連れて行こうと...



腕を、掴みました」



結果がこれですと彼女は自虐的に笑う。



では、何故



「何故、Aちゃんまで死にかけているんだ!!!真逆君はAちゃんまで...」



「違う!!庇ったのよ!!拷問班は銃で自分を貫こうとした!!彼女は!!!心が綺麗すぎるがあまりに!!銃を掴んでそのまま...!!」



甲高い悲鳴は秋吉ちゃんのものだったのだ。



「ぁ...き...よし...さ...」



パクパクとAちゃんは口の開閉を続ける。
口から垂れた血が地面へ音を立てるかのように落ちた。



「だめ......だっ、た...の...?」



それが何か瞬時に悟った彼女は泣きそうな顔で笑う




「うん、駄目だった」と。

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羅尓 - 久しぶりに涙が出ました。 (2021年7月26日 12時) (レス) id: 9b89cbfb6e (このIDを非表示/違反報告)
たまり - 私も名古屋です!(誰得)お話すごく好きです。応援してます! (2018年7月25日 16時) (レス) id: 7ebfe7ebc4 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - キャラがはっきりしていてとても面白いです。シリアスなテンションの話なのに不思議とサクサク読めました。これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 22時) (レス) id: 4e46b846c9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 名古屋の方なんですね!私も名古屋人なんですよ!←で?   凄く面白いです!頑張ってください (2017年12月28日 13時) (レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 読んでいて凄くワクワクしました!凄く面白かったです、早く続きが見たくて仕方ないです。更新楽しみにしてます(*'v'*) (2017年10月11日 12時) (レス) id: 80af1d3c01 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2016年7月26日 22時

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