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「お見送りしましょうか...?」
「結構よ。
お見送りって言ったって車で崖から落ちるところを見るって事よ?嫌でしょ?
それに帰る確率の方が低いしね」
「そうですね...」
お会計。
自分の分を払おうとしたら秋吉さんによって止められた。
子供に払わせる程自分は貧乏じゃない、だそうだ。
「ここでお別れね」
「...」
「あっちで...」
ポンッと肩に手袋に包まれた手を置かれ顔を上げる。
彼女は穏やかに笑っていた。
「あっちの世界で待ってるから」
「!
は、はいッ!!」
それじゃあね、と手を振り去っていく。
やっぱり格好いい。
「あれ?Aちゃんじゃないか」
本日二度目の肩ポンをされ振り返る。
別にびっくりなんてして無いからッ!!
「太宰さん」
「奇遇だねぇ。ここのカフェよく来るの?」
「今日が初めてです」
そっかぁ、と彼は笑いそのカフェを指さして言った。
「お茶しない?」
「今出てきたばっかりなんですけど」
「では別のところへ行こうか」
ほら、と自然に手を差し出されたので取り敢えず叩いておいた。
ハイタッチじゃ無いよと言われたけど無視しておく。
「ここならどうだい?」
「良いですよ」
案内されたのは二人席。
中はさっきと違い暗く、大人な雰囲気だ。
...私不釣り合いな気がする。
「さて、本題に入ろう」
運ばれて来た珈琲を一口含み「苦いね」と言いながら彼は牛乳を入れくるくる回す。
珈琲は薄いココアの様な色へ変わって行った。
「単刀直入に聞くね?
Aちゃん、君は____
こ の 世 界 の 住 人 じ ゃ 無 い 。そうだろう?」
私は笑を返した。
何だ。やっぱりバレてるじゃ無いか。
私は口元に笑を湛えたまま、話を続ける。
「どうしてそう思うのですか?」
「今までに君のような子に何度も会ってきたからね」
例えば、と指おる。
「四年前、友人が死ぬ直前に現れた少年。
二年前、入社時に現れた双子。
数週間前に現れ退社した女性
そして____」
ぴっと指をさされるのは好きじゃない。
けど笑は崩さないで只その人差し指を眺める。
「敦君入社時に現れた君だ」
「...ふふ、流石太宰さん。何でもお見通しなんですね」
珈琲を飲む。
確かに苦い。
けど此処で牛乳を入れるのは何か嫌でそのまま飲み続けた。
「____それで、何が言いたいんですか?」
彼はにやりと悪戯っ子のように笑った
「帰る気はあるのかい?」
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羅尓 - 久しぶりに涙が出ました。 (2021年7月26日 12時) (レス) id: 9b89cbfb6e (このIDを非表示/違反報告)
たまり - 私も名古屋です!(誰得)お話すごく好きです。応援してます! (2018年7月25日 16時) (レス) id: 7ebfe7ebc4 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - キャラがはっきりしていてとても面白いです。シリアスなテンションの話なのに不思議とサクサク読めました。これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 22時) (レス) id: 4e46b846c9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 名古屋の方なんですね!私も名古屋人なんですよ!←で? 凄く面白いです!頑張ってください (2017年12月28日 13時) (レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
庵(プロフ) - 読んでいて凄くワクワクしました!凄く面白かったです、早く続きが見たくて仕方ないです。更新楽しみにしてます(*'v'*) (2017年10月11日 12時) (レス) id: 80af1d3c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2016年7月26日 22時