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「...どうしたの、Aちゃん」
突然目の前に太宰さんの顔が割り込んで来た事で、私の思考は中断された。
「...何がですか?」
「昨日出掛けてからずっと上の空じゃないか。
...何かあったのかい?」
「......、...いえ、何も」
言えるわけ無いじゃないか。世界への帰り方が分かったなんて。
その帰り方が____...
ー前日ー
『帰る方法はね____
来た時と同じ事を、丁度1ヶ月後にやるの。
それでも帰れる確率は低いわ。
来るだけでも凄い事なのに。』
『来る時と...同じ事...』
その場合...私は...
『飛び込み...自✕......』
ぞくっとした。
また、川に飛び込まなくちゃいけないなんて。下手すれば、死んでしまうのに。
『そう...。貴方は自✕で来たのね...』
『...?あなたは?』
『私は寝不足で運転していたら、崖から落っこちちゃったのよ。』
『...何処で知ったんですか?帰る方法を』
『簡単よ。
以前にもトリップをした人のデータを調べ上げたの。
中には何回も成功している人も居るみたい。
ただ、帰れるのは1ヶ月後のみ。
その機会を逃せばもう...帰ることは...出来なくなる』
彼女はとても苦しげにそう吐き捨てた。
『私は...帰ってからも苦しみ続けなくちゃいけないのよ。
この手で、何十、何百人と人を殺めてきた...ッ!!
私は、この世界が嫌いよ...!!
どうして...こんな力を持ってるの...!!何でこんな力なの...!!』
ざわざわと風が騒ぎ出す。
日が落ち、辺りはもう薄暗くなっている。
『でも...帰らなくちゃいけない。
向こうで待ってる人達が居るから』
____...
私には待ってくれる人達が居ない。
私は現実から逃げ出した人間。
正に、人間失格。
私は、人間失格者だ。
キーボードを叩く力が自然と強くなる。
帰るべきなのか分からない。
帰ってどうするの?何が出来るの?
一度逃げ出した様な人間が、どうして平然と戻れる?
唇を噛み締めると、ぶわっと血の味が広がった。
死にたい。
けど、心のどこかで「死にたくない」と叫ぶ私がいる。
...私は......どうするべきなの......?
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羅尓 - 久しぶりに涙が出ました。 (2021年7月26日 12時) (レス) id: 9b89cbfb6e (このIDを非表示/違反報告)
たまり - 私も名古屋です!(誰得)お話すごく好きです。応援してます! (2018年7月25日 16時) (レス) id: 7ebfe7ebc4 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - キャラがはっきりしていてとても面白いです。シリアスなテンションの話なのに不思議とサクサク読めました。これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 22時) (レス) id: 4e46b846c9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 名古屋の方なんですね!私も名古屋人なんですよ!←で? 凄く面白いです!頑張ってください (2017年12月28日 13時) (レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
庵(プロフ) - 読んでいて凄くワクワクしました!凄く面白かったです、早く続きが見たくて仕方ないです。更新楽しみにしてます(*'v'*) (2017年10月11日 12時) (レス) id: 80af1d3c01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2016年7月26日 22時