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十三頁 ページ15






ガサガサ



夜、誰も居なくなった探偵社から微かな物音がした。

たまたま忘れ物を取りに来た太宰と国木田は顔を見合わせる。

太宰がお化けかもと脅せば国木田はそんな事ある筈がないと即答、暫くし、太宰が探偵社のドアを開いた。


音が止む。


二人は慎重に探偵社に滑り込んだ。
泥棒かも知れない。二人は初めてのこの事態に戸惑いながら進んだ。

そして____



ゴトッ



「! そっちか!!」


国木田が懐中電灯で照らした先にいたのは...


「へ?Aちゃん?」


「う、あわぁ...こんばんは......」


「こんな夜中に何をしている」


「忘れ物...です」


それは偶然、と太宰は笑う。
しかし実際は違った。
探していた物、それはトリップの前例だった。


『社長、私はここの住人ではありません』

『頭が可笑しく思えるでしょうが、私は別の世界の人間です』

『前例がある筈です!お願いします、資料庫を見せて下さい!』


社長はあっさり信じた。
元々、何かがおかしく感じていたようだ。流石社長と言うべきか。


「ふーん、で、それは見つかったの?」


「えっ。あー......はい!見つかりました!それでは...。」


「待ちたまえ」


肩を掴まれ彼女はビクリと体を揺らした。
嫌な汗が流れる。


「何ですか?」


「三人で忘れ物とは面白くないかい?何処か飲みにいこうではないか!」


「莫迦か、伊藤は未成年だぞ」


「ちぇっ」


「ほら鍵を閉めるから早くでろ!」


追い出される形で二人が出て、後に国木田が鍵を閉めた。カチャリと心地よい音がする。

(収穫は無し...か、まぁ、初日だし)


探偵社のビルから三人はぞろぞろと出、三人は別れた。


「本当に一人で大丈夫?」


「はい、ではまた明日」


昨日と変わらず大きな満月。
今晩は黄色だ。


Aは重い足取りで社員寮へ向かった。
別に戻りたいとは思わなくはない。
けど、この世界に居てはいけない。私は死ねればいいが、此処で死ぬのはいい迷惑だ。

加奈子...どうしてるのかな。

何度目かのため息をついたその瞬間、



ドンッと肩が誰かとぶつかった。


「いたっ...。すみません」


「僕こそすまぬ。怪我はないか。」


「はい」


「では」


どうってことない会話の後、Aはヘタリと座り込んだ。


その人...黒い長外套を着たその人からは血の匂いがしたからだった。

ちょっとやそっとの血の匂いじゃない。
大量の血の匂いだった。

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羅尓 - 久しぶりに涙が出ました。 (2021年7月26日 12時) (レス) id: 9b89cbfb6e (このIDを非表示/違反報告)
たまり - 私も名古屋です!(誰得)お話すごく好きです。応援してます! (2018年7月25日 16時) (レス) id: 7ebfe7ebc4 (このIDを非表示/違反報告)
はねこ(プロフ) - キャラがはっきりしていてとても面白いです。シリアスなテンションの話なのに不思議とサクサク読めました。これからも頑張って下さい! (2018年3月27日 22時) (レス) id: 4e46b846c9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ - 名古屋の方なんですね!私も名古屋人なんですよ!←で?   凄く面白いです!頑張ってください (2017年12月28日 13時) (レス) id: 619380b1ab (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 読んでいて凄くワクワクしました!凄く面白かったです、早く続きが見たくて仕方ないです。更新楽しみにしてます(*'v'*) (2017年10月11日 12時) (レス) id: 80af1d3c01 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2016年7月26日 22時

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