密かに、君を見ていていいですか？【妹尾 匡】

+seventy-three ページ40

布製のシンプルなペンケースの中には




深紅に白いラインの入ったオシャレなペンが見るも無残な姿で入っている




いつぞやに私が思い切り踏んでしまったのが原因なのだが





そのペンに刻まれている文字は２つ





"galaxy standard"と"諏訪 怜治"の文字





重厚そうなそのペンは真ん中からバキリとヒビが入っていた






「あれ、そのペン、派手にいっちゃってるね」





動きが止まった私を不思議に思ったのか、手元を覗いてきた諏訪さん





「あ、いやー、大丈夫です。読み合わせしましょうか・・・！」





このペンの無残な姿をギャラスタである諏訪さんに見られ焦る私をよそに






諏訪さんは顎に手を添え、何かを考える仕草をすると





「それ、俺のかも」





私は顔から血の気が引くのを感じた




トップアイドルの、しかもそのリーダーである諏訪さんのペンを




あろう事か、踏んづけて折ってしまった私




「あ、あの、誤って済まされないかもしれませんが、本当、その、すみませんでした」





私は深々と頭を下げた




怖い。明日にでもこれを知ったファンが私を襲いにくるかもしれない




そんな行きすぎた考えをしてしまうほどに罪悪感が胸に広がって





もう、涙目になっているかもしれない





「頭を上げて。俺は怒ったりなんかしないよ。きっとわざと壊したわけじゃないんだろう？」





優しい声とともに頭に落とされる手のひら





ゆっくりと頭をなぞるように伝わる温もりに、なんだか涙がこみ上げてくるように感じた





顔をあげると、諏訪さんと目があって





「えっ、もしかして泣いてるの？大げさだな。大丈夫だよ」





うわぁ、私、諏訪さんに頭撫でられてる・・・




途端に顔まで熱が広がった




「あ、あの、本当に言い訳じみちゃうんですけど、踏んだ事に気付いた時にはもう遅くて・・・

本当にすみません。弁償します・・・」





目線を下に落としながら小さい声で謝ると、諏訪さんは少し困った顔をして





「うーん。そんなの気にしなくていいんだけど、どうしてもって事なら・・・」

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