今だけ、君を思ってもいいですか？【妹尾 匡】

+sixteen ページ18

話題、変えなきゃ！と思い、必死に別の話題をふる





「じゃあ、楓君は好きな人いるの？」





「いない、ですけど」





あれ、これもダメだったかな？！






「憧れの人ならいます」






斜め上の返答が返ってきた






「久我さんって言うんですけど、僕、久我さんに憧れてストライド始めたんです！」






「へー！そうなんだ！」






楓君にも、そんな存在いたんだ。って失礼か





楓君のさっきの落ち込みムードはどこに行ったのか






これ、見て下さい！なんて言ってスマホを見せてくる





落ち込んでいた訳ではなくて、ひと安心した





楓君が見せてくれたのは、動画だった





その人は白髪の結った長い髪をなびかせ、走っている





そのフォームはとても綺麗だった





そして、リレーションを繋ぐ






スピードを落とさずトップスピードのまま繋ぐ完璧なリレーション





「すごい・・・」




「ですよね！！」





思わず見入っていたら、口に出ていたようだ





「Aさんも！この感動がわかりますか！！」





今まで見た事のないくらいの興奮っぷりで、楓君の声には熱意がこもってるのが分かる






「う、うん。私、ちっちゃい頃だけど、ストライドやってたから」





えへへ、と笑って見せた





「そうなんですか！でも、女子は出れないんじゃ・・・」






「そーなの、知らずにがむしゃらにやってたの、えへへ、バカでしょ？

そのおかげで、並より体力はあるし、走るのも結構速いんだけどね」






こんな事、人に話すのは初めてかもしれない






走るの速いね！なんて言われる事は多かったけど、ストライドの話しなんてしなかった






楓君がストライド選手だから、っていうのもあるかな






「いいと思います！僕なんか、ストライド始めたの、高校からですから！」






それでいて、レギュラーになれるなんて、やっぱり楓君はすごいと改めて感心した

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