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｢エミリー、話をしようか｣
とか変に改まった感じでメアリーに呼ばれたから、彼女がいるお茶会の席に座った。机の上にはいつもの様に紅茶とお菓子が並んでる。
光景はいつもと同じやのに雰囲気だけがいつもと違って、落ち着かへん。
｢なんなん急に改まって呼んで、なんの話し？｣
｢この場所についてと、キミの事だよ｣
今まで全く話題にされたことやなかったからビックリした。ちょっと胸がざわついて、嫌な予感。
なんやメアリー、いつも曖昧にはぐらかしてた癖に、知っとったんか。やるせない気持ちになって机の茶菓子に視線をやって、彼女を見た。
彼女は紅茶を1口啜ったあと口を開いた。
｢ここはね、あの世とこの世の境目だよ｣
｢あの世……？うそやろ、そんなことある？｣
｢本当だよ。あの柵の向こう、川を超えるとあの世だ。そしてここはそんな曖昧なキミの夢の中｣
｢夢の中｣
｢そう、夢の中だよ。キミの頭の中｣
急にそんなことを言われて、冷静でおれた俺は凄いと思う。ゆっくりとゆっくりと彼女自身も理解する様に話していく。考えたくないけど俺はゆっくり話されるそれを受け入れるほか無かった。
だって、否定するには余りにも、ここは非現実的すぎる。星が降ること、日が昇らないこと、人が居ないこと、メアリーと俺しかおらん事。
｢ほんなら、キミは誰なん？メアリーはなんなん？｣
｢私はね、この世界の門番のようなものかな｣
なんやねんそれ、そんな事言われてもイマイチ、ピンと来やんくて。けどそんな俺を知ってて彼女はあんまり詳しく話すつもりも無いみたいやった。ずるいわ。
｢門番、ずっと1人ここで門番してたって言うんか？そんなん…そんなん……｣
｢…寂しすぎるわ｣
ポツリと俺の口から零れた言葉に、表情の変わらなかった彼女の顔が少し歪んだ気がした。
こんな場所で羊と彼女だけの世界で、俺みたいに迷子になった人を待ってたってことなん？俺やったら耐えられん。
｢大丈夫だよ、キミはもうすぐ帰られるから、エミリーは自分の名前を忘れなかったみたいだしね｣
｢名前？…俺の名前？｣
｢そうだよ、チーノ。いい名前だね｣
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作者名：ねこ | 作成日時：2021年5月4日 0時
