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｢ここだよ｣
少し歩いていくと建物と白い物体が見えた。
建物は大きくもなく、かと言って小さくもない。映画とかで見るような小屋。そして白い物体は羊やった、およそ10匹くらいの羊が柵に囲まれずに野放しに動いている。
｢可愛いでしょう、私の家族だよ｣
｢柵はしやんくていいん？｣
｢この子達は賢いからね。そう遠くへは行かないし、ちゃんと戻ってくるよ｣
そういって羊を撫でる彼女の表情はとても優しい。
俺の傍にも羊が寄ってきたから、彼女の真似をして撫でることにした。ふわふわもこもこでめっちゃ気持ちい。
なんか寝れそうや。
｢キミはずっとここにおるんやろ？ここはなんなん？｣
｢ここは迷子の人が来る所だよ｣
｢迷子？俺、気がついたらここにおったんやけど｣
｢うん、エミリーは迷子だ｣
｢エミリー？｣
｢キミの事だよ、エミリー｣
そう言ってジッとこちらを見つめてくる。彼女は巫山戯て言っているようには見えんかった。
エミリーって、なんか女の子みたいやん。
｢俺にはチーノって名前があるねんけど｣
｢それでもキミは私にとってエミリーだよ｣
｢なんでなん？｣
｢迷子だからね｣
この子、やっぱ不思議な子やな。電波ちゃんか？…ていうか変な子？
もしかして俺とんでもない人に助けられてしもたんちゃん…。
若干表情を引き攣らせながらも取り敢えず｢そうですか｣と返事をした。
｢でも俺の名前はチーノやからチーノってよんでや！｣
｢うん、分かったよエミリー｣
｢キミ……俺の事嫌いなん？｣
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作者名：ねこ | 作成日時：2021年5月4日 0時
