11 変化 ページ11
「久しぶりだな、外を歩いたの」
部屋から見るよりも眩しい光に目を細めるA。
肺いっぱいに空気を吸い込むと、早速ショッピングモールまで電車を乗り継いだ。
「はぁ・・・最後に来たのはいつだっけか」
いつかの記憶と同じように佇む巨大な建物に息を漏らすと、Aはビルに足を踏み入れた。
暫く来ない間に改装工事でもしたのだろうか、ショッピングモールの雰囲気は大きく異なっていた。
暖かな自然の光に包まれたナチュラルな内装になっていたため、非常に落ち着く空間だ。
(来て良かったな・・・”小説展示館”に出会っていなければ、きっとここに来ることもなかったはず。感謝しないと)
心地よい雰囲気に顔を綻ばせながら衣服が売ってあるところまで急ぎ足で進んだ。
「・・・わぁ・・・」
衣料品売り場まで来たAは感嘆の声を漏らした。
そこには、新しく大人気ブランド店ができていたのだ。
おしゃれなデザインの店内に、ネットで調べた通りの「流行り」の服がたくさん置いてある。
(このお店が来てたなんて・・・早く来ればよかった)
「来てよかった」が「来ればよかった」に変わっていることに気づき、Aは苦笑してから店に入った。
目を引いたのは、あちこちにあるポスターだ。
普通の店のポスターであれば、顔の整っていてスタイルが良い人が服を着こなすものばかりだ。
しかしこの店では、確かにそういうポスターもあるものの、例えば体型が気になる人、身長にコンプレックスがある人などの、総括して言えばあまり見た目が良くない者でもファッションを楽しめるようにという気遣いだろう、そのような人たちが載っているポスターが多かったのである。
Aは店の心配りに心が温かくなった。
(世界がこんな人で溢れたらいいのに。・・・そうしたら、私も今こんな生活をしていない)
『勉強ができればいいの』
『勉強しなさい、良い仕事に就きなさい』
『見て見てーまたガリ勉ちゃんが勉強してるぅ〜』
『陰キャって勉強しかできないのかなぁ?かわいそーー!』
頭に過ぎった声を振り払い、Aは顔を上げた。
(こんなこと考えてちゃだめだよね、だって今の私は勉強だけのAじゃない、Aなんだから!)
そう自分を鼓舞できるようになったのも、”小説展示館”と出会ったからだ。
ほんの少し微笑むと、Aは店の中を進んでいった。
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リアナ-璃亜那-(プロフ) - レミードールさん» ありがとうございます!違和感のある文章等ありましたら遠慮なく言ってくださいね! (2021年9月21日 15時) (レス) id: 6afe7efa1d (このIDを非表示/違反報告)
レミードール - とっっっってもおもしろいです! (2021年9月21日 15時) (レス) id: 2c7b3635e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リアナ-璃亜那- | 作成日時:2021年7月24日 12時