血鎌 ページ45
ふう、と額を軽く拭う颯。
いつつけられたのだろうか、額の傷口から血が細く流れ出ていた。
堕姫さんの体が、自分の頭を拾う。
髪に隠れて、その表情は見えなかった。
颯「散々大きな口を叩いておいて、所詮この程度か」
馬鹿にしたように笑う颯。
しかし、私は知っていた。まだ終わりではないことを。
堕姫「もうヤダ!アンタなんて、アタシ嫌いよ!!」
高い声で叫ぶ堕姫さんの口調は、何故か幼い少女を思わせた。
颯「本当のことを言ったのみだ。お前は負けた」
堕姫「そういうところよ!アタシまだ負けてないんだもん!」
颯「何を言っているんだお前は。斬られたのが分からないのか」
堕姫「うるさいうるさいうるさい!アタシまだ死んでないの!」
呆れたような表情を見せる颯に怒鳴る堕姫さん。
その手が自身の頭を体にくっつけ直し、近くに寄ってきていた颯の顎を思い切り蹴り上げたのは、瞬く間の出来事だった。
颯が苦しそうなうめき声を上げる。
後方に一回転しながら距離を取り、殺したはずの堕姫さんを見つめた。
颯「・・・何故生きている」
堕姫「死んでないって、負けてないって言ったわよね、アタシは。油断してたのはアンタなんだから!」
勝ち誇ったように言う堕姫さんの体内から、妓夫太郎さんが出てくる。
彼を見るのは随分久しぶりだった。
妓夫太郎「偉いじゃねぇか、なぁ。おめぇは頭が足りねぇのに、俺が来る前に反撃できたもんなぁぁ」
語尾を伸ばすあの癖に、妙な懐かしさを覚えた。
颯「お前が本体か」
颯の声音は先程とは打って変わっていた。
それはそうだろう。頚を切っても死ななかったどころか、中からもう一人鬼が出てきたのだ。
私が彼でも、混乱し焦ったに違いない。
堕姫「お兄ちゃん聞いて!アイツ、アタシのことをこの程度って言ったの!アタシ頑張ったのに!Aだっているから、頑張ったのに!!」
泣きそうな声で叫ぶ堕姫さんの言葉の中に、私の名前が混ざっていたことに驚いた。
こんな堕姫さんは初めて見るから、私のことなど気にもしていないと思っていたのに・・・本当に優しい人だ。
妓夫太郎「それは許せねぇなぁ。お前は頑張ったのになぁ・・・許せねぇなぁぁぁぁ!!」
幼い子供をあやすようだった口調が、突如豹変した。
振り向きざまに、颯に向かって何かを投げる。
それは、後で聞いたのことなのだが、「血鎌」と呼ばれる彼の血肉で作られた鎌だった。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ