番外編 - 千花 3 ページ31
ある夜、姉ちゃんが変貌した。
姉ちゃんの目は何よりも冷たい青で、その目で見つめられると恐怖すら覚えるほどだった。
父ちゃんと母ちゃんは、最初姉ちゃんだと気づかなかった。
自分の娘なのに、そんなことあっていいはずがない。
姉ちゃんは無表情だった。
私のせいだと、涙を飲み込んだ。
私が、姉ちゃんは何も悪くないって言えていれば。私が、もっとしっかりしていれば。
・・・私が、姉ちゃんの妹じゃなければ。
後で考えれば、このときの私はどうかしていたのだと思う。姉ちゃんの妹じゃなければよかっただなんて、絶対に考えてはいけないことのはずだからだ。
A『ねえ、聞いたことはない?傷がすぐに治る化け物の話を。こんなふうに、鋭い牙を持つ化け物の話、聞いたことがないわけないよね?』
そう言って姉ちゃんは微笑んだ。寒気がするほど狂気に満ちた、冷酷な笑みだった。
口元で、牙がぎらりと鈍く光る。
A『知ってるでしょ?その化け物はね、人間を喰うんだよ』
知らないはずがない。
最近よく噂を聞くようになった、その化け物の話。
A『ねえ、二人はその化け物が人を喰ってるところ、見たことある?』
正直言って、私は信じていなかった。
このあたりで人が頻繁に惨殺されているのは紛れもない事実だったが、大方野犬だろう。そう思っていたのだ。
まさか、実在したなんて。
まさか、それが姉ちゃんだなんて。
A『ないよね?ふふ・・・せっかくだから、見せてあげよっか?』
いつの間にか、姉ちゃんは私の腕を掴んでいた。
無理もない、私が止められていれば姉ちゃんはこんな姿にならなくて済んだのだから。
抵抗しようとは思わなかった。きっと、私を殺ったあとに父ちゃんと母ちゃんも殺るのだろう。
その後どうするのだろう?喰べるのだろうか。それとも、野ざらしにするのだろうか。
いずれにせよ、私がそれを見ることはない。
私の腕を掴む姉ちゃんの手に力が入る。
思わず目を閉じた。
どうか、
一瞬で死ねますように。
苦しんだりしませんように。
それとも、そう願うことさえ傲慢なのだろうか?
〚江戸こそこそ噂話〛
話の序盤で夢主は手先が不器用で千花は器用だとありますが、実際は逆。
千花が不器用というわけではありませんが、夢主の方が圧倒的に器用です。
それでも自分の方が不器用だと思うようになったのは、彼女らの親の育て方が原因でした。
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たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
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