鬼舞辻無惨 ページ21
ヒュッという変な息の吸い方しかできない。
体が震える。
黒死牟さんは上弦の壱。他の上弦に会ったことはないが、話を聞く限り黒死牟さんが無惨様以外の鬼の中では最強のはずだ。
それなのに、気配が明らかに違う。
強張った体を必死で動かして、私は土下座した。
怖い。
今までで一番、怖い。
黒死牟「この鬼が・・・前お話しした鬼です・・・」
始めて聞く黒死牟さんの敬語。彼が本気で無惨様を尊敬していることが痛いほど伝わってくる。
無惨「ほう・・・こいつが・・・」
無惨様の視線が、黒死牟さんから私に移った。
無惨「名前は確か」
一瞬黙り込む無惨様。
私が名乗るべきなのだろうか、勝手に声を上げれば怒られやしないだろうか。そう考えていると、黒死牟さんにつつかれた。
意を決して、自分の名前を口にする。
A『Aといいます』
無惨「それは人間の頃と同じ名前か」
A『仰る通りです』
なんとかまともに会話できている自分に些か驚いた。
この威圧感に萎縮したばかりなのに、不思議だ。
無惨「まあいい。それで、何の用だ」
黒死牟「実はこの鬼、人間の妹と通じているのです。そのことを容認頂きたく存じます」
黒死牟さんの言葉を聞いて、やっと理解した。
確かに人と通じていることは、鬼としてそう簡単に許されることではない。
無惨「
一気に無惨様の声が低くなる。
背筋に冷たいものを感じながら、それでも誠意を見せるため、私は顔を上げて訴えた。
A『お怒りはごもっともです。ですが、どうにか許していただきたいのです。お願いします!』
無惨「・・・人と通じてどうする」
A『妹は、私が両親に虐げられていたときに庇ってくれました。私は鬼という立場を頂いた直後に両親を殺害したので、今の妹は私の他に肉親がいないのです。妹に寂しい思いをさせないために、頻繁でなくていいのです、会ってやりたいのです!』
もっとも、と私は付け加える。
A『喰わないのは妹だけで、それ以外の人間は容赦なく殺害します。特別扱いしていただきたいのは妹の件だけで、もし私が無惨様の気に障るようなことをしてしまった場合、当然ではありますが命を差し出す覚悟です。・・・どうか、聞き入れて下さいませんでしょうか?』
言い切ると、私は深々と頭を下げた。
次で、私の生死が決まる。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ