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これから ページ19

なんて優しい子なんだろう。私は心から思った。


考えてみれば、今まで何度も思ってきたことだ。他人から見た「優しい」ではなく、正真正銘の私の気持ちとしてである。


でも、今この瞬間ほど千花の優しさを身にしみて感じたことはない。


普通、自分を大事にしてくれていた両親が殺されたとなれば怒るか泣くかするはずだ。


それなのに千花は、私を責めることも泣き崩れることもなく、優しい表情をして私を見つめていた。


ごめんなさい、黒死牟さん。


あなたは自分の弟を嫌悪していたようだけど、私は違います。


私が妹より劣ったものとして扱われるのは辛いけれど、私は妹が、千花が大好きだ。


私の目から涙が溢れた。千花が驚いたように目を見開く。


A『千花・・・ありがとう・・・』


謝れば千花に怒られる気がして、私は感謝を伝えた。


千花「うん」


それ以上、私達の間に言葉は必要なかった。





A『じゃあ、今後の千花のことなんだけど』


ひとしきり泣いた後、私は切り出した。


千花の両親はもういない。私は鬼になったのだから問題ないが、千花はまだ人間なのだ。


かといって鬼にするわけにもいかない。


子供なのだから保護者が必要だ。


千花「大丈夫だよ。自分で言うのもなんだけど、街の人には前々からよくしてもらってるから。きっと支えてくださると思う」


A『うん、そうだね。私もそう考えてた』


随分ととんとん拍子に話がまとまっていってしまう。私は複雑な気分になった。


千花「・・・ねえ、姉ちゃん」


さっきまで笑顔だった千花が顔を曇らせ、私に尋ねかけた。


千花「もし今からどこかへ行っちゃうとしても、また会いに来てくれる?」


A『千花』


千花「他の人がいる前じゃ難しいかもしれないけど、せめて私が一人のときには会いに来てくれないかな」


ああ、やっぱりこの子は寂しいんだ。


千花「無理だったらいいんだよ、・・・でも・・・本当にたまにでいいから・・・」


言葉を選びながら言う千花を、私は抱きしめる。


A『もちろんだよ。会いに行く・・・絶対に』


私は千花のたった一人の肉親だ。


だから、絶対に寂しい思いはさせたくない。


そんな思いを込めて、私は千花を強く抱きしめた。

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たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまき | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年7月19日 6時

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