見せてあげよう ページ16
私が自分の姿に惚れ惚れとしていると、後ろで物音がした。
気配で父ちゃんと母ちゃん、千花だと分かる。前は気配など分からなかったのに、これも鬼になったためなのだろうか?
母「誰だいあんたたち・・・」
震える声で母ちゃんが言う。
私は振り向いた。鬼となっても人間時代の面影はあるのだから、普通の親なら分かるだろう。
とはいえ、千花以外は家族だと思っていないが。
千花「・・・姉ちゃん?」
やっぱり私に気づいたのは千花だった。
千花「姉ちゃん、どうしたのその姿?その人は誰?・・・そんなことより、帰ってきてくれてありがとう。姉ちゃんがいなくなっちゃうのは悲しいよ」
こんな姿になった私に、今までと同じように接してくれる。こんな人間はなかなかいないはずだ。
父「何を言っているんだ千花・・・こいつはお前に痣を作ったんだぞ!帰ってきていいわけがない!」
一つ訂正しよう。ある意味、父や母も私の扱いは変わっていない。
千花「何度も言ってるよね?姉ちゃんは鋏で怪我したんだよ!血もいっぱい出てたんだから!」
そう言って私に駆け寄り、袖を捲りあげる千花の顔が、直後驚愕の表情を作った。
千花「・・・あれ?姉ちゃん、傷は?」
私が怪我したはずの腕には、切り傷どころかかさぶたさえなかったのだ。
母「傷はきっと千花ちゃんの気の所為よ!」
父「そうだぞ千花、良かったじゃないか」
千花「・・・」
千花が戸惑っているのがありありと分かる。だって、ちゃんと私は怪我をしたのだから。
彼女の手をそっと離させてから、私は始めて口を利いた。
A『確かに私は怪我したよ。でも、あれくらいの傷すぐに治った』
千花「・・・え?」
A『ねえ、聞いたことはない?傷がすぐに治る化け物の話を。こんなふうに、鋭い牙を持つ化け物の話、聞いたことがないわけないよね?』
私が言いながら牙を見せると、母ちゃんや父ちゃんの顔が引きつった。
A『知ってるでしょ?その化け物はね、人間を喰うんだよ』
さり気なく千花の腕を掴む。二人の顔が恐怖に歪むのを見て、私は微笑んだ。
気分が高揚しているのが分かる。随分と心地がいい。
A『ねえ、二人はその化け物が人を喰ってるところ、見たことある?ないよね?ふふ・・・せっかくだから、見せてあげよっか?』
千花がぎゅっと目を閉じる。
その細くて白い、綺麗な首に向かって、
私は手を振り下ろした。
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たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
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