番外編 - 千花 ページ29
〚番外編・千花Side〛
姉ちゃんが、鬼になった。
考えてみれば、至極当然のことだ。
私は両親に、手先が器用だ、心の優しいいい子だ、姉よりも優秀だ、そう甘やかされながら育った。
でも、私は知っている。
姉ちゃんは私より手先が器用で、優しくて優秀なんだって。
第一、私に針と糸の捌き方を教えてくれたのが姉ちゃんだった。
私がだんだんと上達してくると、私を溺愛するようになった両親が教えに来たけど、その基礎を築いてくれたのはまぎれもない姉ちゃんなのだ。
それに、修復作業のとき、姉ちゃんは私よりも細かい部分を担当してくれている。
私もできないことはないが、きっと姉ちゃんより雑な仕上がりになってしまうだろう。
だから、私は比較的範囲が広くて簡単な部分を修復していた。
でも、そのせいで両親は見つけやすい私の担当箇所ばかりを見て、細かく綺麗な姉ちゃんの箇所は見てくれなくなった。
或いは綺麗すぎて分からなかったのかもしれないけど・・・とにかく両親は酷い誤解をしていたのだ。
姉ちゃんの逸話はもうひとつ。
ある日、びっくりするほど優柔不断なお客様がいらっしゃった。
その時私は裏で修復作業をし、姉ちゃんが店に出ていた。
そのお客様は独特の感性の持ち主らしく、なかなか買う着物を選んでくださらない。
私は気が短い方ではない。でも、あまりに長時間悩んでいるので、本音を言うと少し苛立っていた。
その時。
A『千花』
姉ちゃんが私を呼んだ。
千花「どうしたの?」
A『ちょっと店見ておいて』
私が優遇されているせいで、姉ちゃんは私にそっけない態度で接するようになった。だから今も、無感情な頼み方だ。
千花「いいけど・・・」
A『今度当番変わる』
おずおずと返事をすると、姉ちゃんが当番の入れ替わりを申し出た。
そんなこと気にしなくていいのに、という言葉を飲み込んで私は店に出る。
それにしてもどうしたのかと姉ちゃんの方をさり気なく見ると、どうやらお客様と話しているようだった。
A『・・・でしたらこちらなど如何でしょうか』
「うーん・・・でもねぇ、色合いがねぇ。本音を言うともう少し落ち着いたふうがいいんだけど」
A『ではこちらは』
「いやね、地味って言うわけじゃなくて。なんというかこう・・・優しい雰囲気のね」
かすかに聞こえてきた会話で、私は姉ちゃんの意図に気がついた。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» そうなんですね!なんだか堕姫ちゃんらしい・・・ (2022年12月29日 16時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - たまき@元夕和さん» 一度匂い試してみた事あったんですけど、可愛い様な色っぽい様なそんな感じの匂いでしたよ。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - こだぬきさん» はじめまして!いつもありがとうございます。そうですね、人間時代はできませんでしたからね・・・。めっちゃわかりますそれ!! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
たまき@元夕和(プロフ) - 零さん» わかりました、ありがとうございます! (2022年12月28日 19時) (レス) id: d0ef2aa258 (このIDを非表示/違反報告)
こだぬき(プロフ) - はじめまして!いつも楽しく読ませて頂いてます!私個人としては千花ちゃんも鬼になって姉妹仲良く暮らして欲しいなと思ってます。後堕姫ちゃんといえばイメージ香水あるんですよ〜。 (2022年12月28日 19時) (レス) id: df107beb4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ