圧倒的な ページ6
開いた口が塞がらない。
というよりは寧ろ、気づいたら口が開いていた。
A『・・・あんた何者?』
言っていなかったが、私は齢十四。狛治より三つ上だ。
それなのに、”これ”はなんだ?
自己流で、基礎も全くなっていない彼の動きが、なぜこうも相手を撃つ?
狛治「何者でもない、ただの罪人ですよ」
謙遜するな。
頼むから、謙遜しないでほしい。
謙遜されるほどこちらが劣等感に苛まれるとか、そんな意味ではない。
私は昔から他人に負けるのが大嫌いだった。
相手が年上で、勝つ見込みが一切ない戦いであってもそれは同じことだ。
でも、ただ一人、慶蔵さんに負けるのだけは悔しくなかった。
きっとそれは、己の中で相手の圧倒的な力を認めたからなのだろう。
A『同じ・・・だ』
狛治「何がです?」
A『あんたに対して、たった今私が抱いた感情の正体。負けず嫌いなはずの私が、強いあんたを見ても苛つかない理由だよ』
伯治「何と同じなんですか」
A『師範と』
伯治「・・・」
気まずい沈黙が流れる。
慶蔵「まさか入りたての弟子と俺が同等とはな!俺も落ちたもんだ!」
重い空気を断ち切るかのように慶蔵さんが叫んだ。
私を気遣ってのことなのだろうが、そんな言葉は必要ない。
A『見直したよ、狛治。あんたは凄い。この私が言うんだから絶対だ。・・・私は負けた』
狛治「Aさん・・・」
狛治は困り顔だ。
それはそうだろう。ここで自分を謙遜するのは間違っているし、かと言って急に自慢するのもおかしい。
A『いいよ、何も言わなくて。・・・改めて、これからよろしくね』
狛治「!!はい!」
狛治は心底嬉しそうだった。
いくら狛治に負けたからと言っても、私は諦めない。
少しでも私の求める場所へ近づくために。
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あ - 最後の方の夢主が狛治を𠮟るシーンでめちゃくちゃ泣きました…(褒めてます) この時代の時間軸ってあまりみないから面白かったです! すてきな作品をありがとうございました。 (6月27日 1時) (レス) @page49 id: f2f05df21c (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - りのくさん» りのくさん!?びっくりした!!wりのくさんも占ツク活動されてるんですね、今から見に行きます! そんなふうに思ってくださったなんて感激です・・・ありがとうございます!(今後も投稿頑張ろ) (2022年7月13日 15時) (レス) id: a3bd8e7281 (このIDを非表示/違反報告)
りのく(プロフ) - これからも湊さんご自身のペースで、私生活も作品作りも無理なく頑張られてくださいませ。長文、失礼いたしました。(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ (2022年7月13日 15時) (レス) id: 6dc8803727 (このIDを非表示/違反報告)
りのく(プロフ) - そして最後、地獄で罪を償い終えて現世に戻ってこれた時には嬉しさでいっぱいになりました!本当に良いお話でした、私も作品を執筆してますが、こんなにきっちりまとまった作品を仕上げられる湊さんを本当に尊敬します……!すっごく良かったです! (2022年7月13日 15時) (レス) id: 6dc8803727 (このIDを非表示/違反報告)
りのく(プロフ) - 狛治さんの悲惨な運命と、しでかしてしまう所業の数々がつらくて切なくて、結末を知っててもどうなるかハラハラが止まりませんでした。苦しい戦いのさなか、炭治郎も恋雪さんも夢主ちゃんも、本当に頑張ってくれました……! (2022年7月13日 15時) (レス) id: 6dc8803727 (このIDを非表示/違反報告)
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