いつまでも、共に。【鬼滅の刃】【完結】

絶たれた希望 ページ30

A『あの目は、慶蔵さんの目だ』


そう口に出した途端、そのとおりだともう一人の自分が頷いた気がした。


真っ直ぐなところ、諦めないところ、その優しさ、いい意味で頑固なこと・・・すべてが慶蔵さんそっくりに見えてくる。


当の本人はどこが似ているのか全くわからないといった様子だが、恋雪も私の言葉に頷いた。


恋雪「確かに似てる」


あちら側では、今まで以上に熾烈な戦いが繰り広げられていた。


猗窩座は、当たり前だが完全なる五体満足。一方杏寿郎は色々な箇所から出血している。


それなのに、ここまで動けるのはなぜなのだろうか？あそこまで彼を動かすのは一体何なのだろうか？


慶蔵「自分ではよくわからないが・・・二人がそう言うのならばそうなんだろう」


しばらく考えていた慶蔵さんがそう言った直後、地面を蹴る音や刀と拳がぶつかり合う音がぴたりと止んだ。


どうなった？


砂埃によって見えないその場に向かい、私達は身を乗り出す。


「煉獄さん・・・煉獄さん・・・っ！」


耳飾りの少年も必死な表情で杏寿郎の名前を呼んだ。


ゆっくりと砂埃が晴れる。


「煉獄さっ・・・、・・・ああ・・・ああ！！」


耳飾りの少年が声をもらし、私たちも息を飲んだ。


猗窩座の左腕は皮膚のみで繋がっている状態。


そして右腕は。


A『杏寿郎・・・っ！！』


杏寿郎の腹部を貫通していた。


猗窩座「死ぬ・・・！！死んでしまうぞ杏寿郎！鬼になれ！！鬼になると言え！！」


猗窩座は必死の面持ちで叫ぶ。


死ぬ原因は自分なのに、だ。


ああ、これで希望は絶たれた。また猗窩座はたくさんの人間たちを虐殺する。


私は一瞬持った希望をまた手放した。

逃げるな→←諦めない

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す