もう一度 ページ48
数年後。
こんこんと、私の部屋の襖が叩かれた。
A『はーい』
襖の向こう側にいたのは胡月ちゃんだった。
胡月「指名が入ったよー!準備急いで」
A『また!?ここのところ、毎日指名よね』
胡月「そうだね!凄いなぁ、流石A花魁」
A『やめてよ、胡月ちゃんだって花魁一歩手前じゃない』
そう、あれから私は必死に頑張って、のし上がって花魁になった。
あの糞親たちに対しては、花魁になったときに頂いたお金の殆どを手切れ金として渡し、縁を切った。
遊郭に入ってばかりの頃は、さっさと成り上がってさっさと辞めたいと思っていたけれど、ここはもう私や千晶の、大切な居場所だ。
千晶に関しては、楼主さんにお願いして京極屋に引き入れてもらった。
それから私達は、ずっと一緒だ。
私が座敷へ向かっていると、一人の新入り遊女が声をかけてきた。
「あの・・・お時間があるときでいいので、またお作法を教えて貰えないでしょうか・・・」
A『前も教えたよね?もう・・・ちょっとくらいは自分でも考えてみて』
「す、すみません」
A『だけど、その姿勢は大事だよ』
蕨姫のように、手を上げたり怒鳴ったりはしない。
だけど、後輩に優しすぎるのも考えものだから、こうして遠回しに褒めつつ軽く突き放す。
それができるのが、本当に力のある花魁なのだ。
「あ、ありがとうございます・・・頑張ります!」
A『程々にね』
小走りに去っていく新入り遊女を見送ってから、私は踵を返し座敷に向かった。
さあ、今日のお客様はどんな人だろう?
・・・どんな人であったとしても、私がするべきことは変わらないか。
A『失礼いたしんす』
襖を静かに開けて座敷に入った私が最初に見たものは、無駄に目立つ金髪だった。
そして、私の頭で光る紫丁香花の簪を見つめる、髪色と同じ色の目。
手元で揺れる、日向水木の簪。
その全てで、数年前の記憶が呼び起こされる。
彼は夜を共に過ごすために来たわけではない、そう私の直感が告げた。
善逸「久しぶり。会いに来たよ、A」
懐かしいその声が、私の目を潤ませていた。
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夕和(プロフ) - 語彙力無のネコさん» コメントありがとうございます!堕姫ちゃん可愛すぎるから、本編よりもっと好印象にしちゃいましたw (2022年10月8日 21時) (レス) id: 5def6d75b1 (このIDを非表示/違反報告)
語彙力無のネコ - 最高(*`ω´)b最高最高最高!夢主ちゃんも堕姫ちゃんも可愛すぎぃッッッ!!!♡ (2022年10月8日 21時) (レス) @page19 id: e04f466ec6 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 青白の狼さん» それいいですね! (2021年11月23日 23時) (レス) @page48 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜那(プロフ) - 青白の狼さん» 今の予定だと話が入らないので、続編で入れますね!素晴らしい案ありがとうございます! (2021年11月16日 13時) (レス) id: 0456b1597f (このIDを非表示/違反報告)
青白の狼(プロフ) - 蕨姫パイセン・・・ただ倒すだけでなく、転生後の友情物語もあったらいいなー。 (2021年11月16日 13時) (レス) @page35 id: eebaad3e1e (このIDを非表示/違反報告)
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