面倒な客 ページ15
私がお座敷に入った時、既にそのお客様はお酒を浴びるように呑んでいた。
客「おい、酒が足りねぇぞ!早く持ってきやがれぇ!」
顔を真っ赤にして、もう十分なはずなのにまだ呑み続ける男を見て私は一抹の不安を感じた。
A(だめだよね、始めてのご指名で変なこと考えちゃ)
そう自分で自分を鼓舞すると、私はお客様の元へ寄った。
A『わっちを指名しておくんなさって、ありがとうござりんした』
滑らかな花魁言葉で話しかける。
遊郭に来たばかりの頃は、この”花魁言葉”を覚えるのに酷く苦労したものだ。
でも、私はまだ覚えが早い方だと皆言ってくれたから、なんとかここまで来ることができた。
拙い花魁言葉しか話せなかった当時の私を励ましてくれた人々に心の中でお礼を言いながら、私は言葉を続けた。
A『Aと申します、今日はどうぞおたのん申しいす』
自分の名前を告げると、お客様はやっと顔をこちらに向けた。
客「おい」
始めて向こうから声をかけてくれたことが嬉しくて、私は思わず笑顔になってしまう。
A『なんでござりんすか?』
客「酒」
わくわくしながら返事をしたのに、客はそれだけしか言わなかった。
A『い、今すぐお持ちしんす』
私はまた笑顔で言ったものの、この笑顔は完全な作り物だった。
口角がひくひくと引きつる。
私がお酒を持ってきて側に座ると、お客様がまた口を開いた。
客「おいお前、始めての指名なんだって?」
また「酒」と言われると思っていた私は、失礼ながら少し驚いてしまった。
A『ええ、始めての御指名でありんす』
客「そんなら、俺が遊女の”いろは”を教えてやんよぉ」
A『え?』
ぐでんぐでんに酔ったお客様は、酒の匂いがきつい身体で私に擦り寄り、肩を組んできた。
なるほど、面倒だというのはこういうことか。
遊女がこういう仕事だということは重々承知していたが、それでもここまでの客はそうそういないと思う。
ただ、仮にも相手はお客様。
失礼のないようにしなくては。
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夕和(プロフ) - 語彙力無のネコさん» コメントありがとうございます!堕姫ちゃん可愛すぎるから、本編よりもっと好印象にしちゃいましたw (2022年10月8日 21時) (レス) id: 5def6d75b1 (このIDを非表示/違反報告)
語彙力無のネコ - 最高(*`ω´)b最高最高最高!夢主ちゃんも堕姫ちゃんも可愛すぎぃッッッ!!!♡ (2022年10月8日 21時) (レス) @page19 id: e04f466ec6 (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 青白の狼さん» それいいですね! (2021年11月23日 23時) (レス) @page48 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜那(プロフ) - 青白の狼さん» 今の予定だと話が入らないので、続編で入れますね!素晴らしい案ありがとうございます! (2021年11月16日 13時) (レス) id: 0456b1597f (このIDを非表示/違反報告)
青白の狼(プロフ) - 蕨姫パイセン・・・ただ倒すだけでなく、転生後の友情物語もあったらいいなー。 (2021年11月16日 13時) (レス) @page35 id: eebaad3e1e (このIDを非表示/違反報告)
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