彼女の正体が何であれ【鬼滅の刃】【遊郭編】

救いの手 ページ17

ガシャーーーン！！！


突然響いた轟音に、私も男も固まった。


一瞬華やかな柄の帯が見えたような気がしたのは気の所為だろうか・・・？


「おい」


それに続いて、誰かが”おい”と冷たく言い放った。


少しだけ低くて、響きのよい綺麗な声。


A『蕨姫花魁・・・っ』


客「！？」


男は魂を吸い取られたような顔つきをしている。


それはそうだろう。蕨姫は、ここ吉原で一番美しいと言われる遊女だからだ。


更に、失禁したり失神したりする男もいたという話であるが故に、男性にとって相当な相手だということになる。


客「あ・・・ぁあ・・・っ」


衝撃のあまり”あ”しか発せないらしい男を、蕨姫は冷たい目で見下ろした。


蕨姫「アタシのかわいい後輩に何してんだ爺(ジジイ)」


A『・・・え？』


今、”かわいい後輩”って言った・・・？


男とは違う意味で私も固まってしまった。


蕨姫はそんな私には構うことなく、男の胸ぐらを掴み上げる。


客「っ！？ぐ・・・あぁっ・・・がぁぁ・・・」


蕨姫「吉原(ここ)の決まりも知らねぇような人間が遊びに来るんじゃないよ」


冷たい光を放つ目と、彼女から発せられる圧に、男は言いようもない恐怖を感じている様子。


客「・・・っ」


真っ青な顔で必死に藻掻くも、蕨姫の手はびくともしない。


え・・・？力、強すぎじゃない？←


蕨姫「もしまた来たら・・・分かってるね？」


蕨姫はそう男の耳元で囁くと手を離した。


どさっと大きな音を立てて床に倒れ込んだ男は激しく咳き込んだ。


到底動ける状況ではなさそうだったが、それでも蕨姫に怯えているのか這って出ていく。


蕨姫「全く・・・ああいう客は本当に迷惑だよ」


はぁ、とため息をついた蕨姫は、いつもの何倍も素敵で、かっこよかった。

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