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「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。・・・」
やる気のなさそうな声で、生徒たちが音読をしている。
(こんなもの、覚えて一体何になるんだか)
誰もがそう思っているのは、彼らの顔を見れば明白だ。
そして、そう思っているのは私も例外ではなかった。
AA、15歳。
受験を半年後に控えた中学3年生の教室の空気は、以前に比べれば少しピリピリするようになった。
朗読する教師の言葉を機械的に繰り返しながら、私は目だけ動かして窓の外を見つめた。
誰かが申し訳程度に植えたような、形だけの貧相な樹木の向こうに高層ビルが立ち並んでいる。
もう何度も見ているのだから見ずともわかるはずの、人工物で溢れる景色をそれでも自身の目で捉え、そして目を戻した。
”奢り高ぶる者はいつか滅びる。どんなに栄えてもいつかは朽ち果てる。”
端的に言えばそんな内容の平家物語は、これからの人類の行く先を暗示しているように思えた。
他の動物にはない驚異的な文明の発展と共に、人間は多くの機械を作り出してきた。
太古からの条理であったはずの食物連鎖をものともせず、自分たち人間が地球を支配しているとでもいうような感覚に酔っている。
その姿はまるで、成功を収めた平家のようだ。
教師が平家物語に関する知識を解説し始めた。
正直言ってどうでもいい。
平家物語がもし、人類はいずれ壊滅的な状態に陥るということを示唆していたとしても、だ。
自分たちに未来を知る力はないし、そんな運命に逆らってみようとも思わない。
私たちに、ゲームのような選択肢は存在しない。
生まれてきたが最後、あとは運命に身を任せて生きるのみだ。
チャイムが鳴って、生徒たちが席を立った。これでこの日の授業は終わりだ。
教師が教室を出ると共に、よく話す友人が私の机に駆け寄ってくる。
そして、言った。
「ねえ、”メモリア・ストリート”入れた?」
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たまき - やほ。本人です。ネットワーク障害でpc使えなくなったので今日は来れないごめん。これはおじいちゃんのスマホw (2023年1月29日 8時) (レス) id: 552d662989 (このIDを非表示/違反報告)
キル坊(プロフ) - 凛々さん» コメントありがとうございます!こちらの作品でコラボさせていただいているキル坊と申します!お褒めの言葉とても嬉しいです、更新頑張れます!ありがとうございます! (2023年1月27日 18時) (レス) id: a4a1b981d8 (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 凛々さん» コメントありがとうございます!私のアイコンはpicrewの「少年少女好き?」様で作らせていただきました。 (2023年1月27日 18時) (レス) id: ad7268cde5 (このIDを非表示/違反報告)
凛々 - 更新頑張ってください、あと、気になったのですが、たまきさんのプロフィールの画像ってどこで作られたものですか? (2023年1月27日 18時) (レス) id: 1b4f4241a2 (このIDを非表示/違反報告)
凛々 - この作品大好きです! (2023年1月27日 18時) (レス) id: 1b4f4241a2 (このIDを非表示/違反報告)
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