お兄ちゃん ページ10
私は、昔から手先が器用だった。
ずば抜けて器用というほどでもなかったが、周りよりも細かい作業には長けていたような気がする。
そんな私の家は八百屋。
手先の器用さはあまり関係のない仕事だったが、時々私は両親の仕事を手伝ったりもしていた。
私には、お父さんとお母さんの他に、少し年の離れたお兄ちゃんもいた。
私がまだ小さかった頃からずっとお兄ちゃんが側にいてくれて、ずっと大事に面倒を見てくれていた。
そんな記憶が、うっすらと残っている。
お兄ちゃんは温厚だから一度も怒鳴ったことがなくて、私がいけないことをしたときも優しく叱ってくれた。
それは私相手のときだけじゃなくて、他の友達だとか、そういう人たちにも対してだった。
だからお兄ちゃんは皆から好かれてて、私もそんなお兄ちゃんが大好きだった。
いつもお兄ちゃんの後について回ったりなんかして、迷惑だったんじゃないかと思う。
でも、お兄ちゃんは優しかったから、そんな私に微笑んでよく言ってくれた。
「もし俺がいなくなったときどうするんだよ」
冗談めかして笑いながら言うお兄ちゃんに、私はいつも食って掛かったものだ。
「そういうこと言わないでよ!お兄ちゃんの馬鹿っ!」
ごめんごめん、と笑うお兄ちゃん。
今考えてみれば、お兄ちゃんの言っていたことを冗談として捉えるべきではなかったと思う。
お兄ちゃんといれば楽しかったし安心できたから、私はお兄ちゃんに依存していた。
だからこそ、お兄ちゃんがいなくなったときどうするかなんて考えたことはなかったし、考える必要もないと思ってた。
でも、人生何が起こるか分からない。
特殊な力なんか持ってなかったから、未来のことなんて知るよしもない。これは私だけじゃない、誰しもそうだ。
だからこそ、明日に起こる何かのために、事前に準備しておく必要があった。
今でこそ、準備の大切さを私はよく理解している。
でも、昔は少しも理解していなかった。
特別な出来事なんてない、極々普通で一般的な人生を生きていくんだって、確信も証拠もないのにそう思い込んでいた。
”それ”は、世間知らずだった私に、この世界の不平等さと不条理さを、不変のものはないということを、教えてくれたんだ。
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たまき(プロフ) - 緋月さん» おおお!私がそっちのこみゅいくわ (2023年2月22日 9時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
緋月(プロフ) - たまきさん» ログインしたで。こみゅってどうやるの? (2023年2月22日 7時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - wwありがとwここから飛んでみたら詳しく書いてある!▷▷ https://uranai.nosv.org/u.php/hp/aisu0821/ (2023年2月21日 15時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
緋月 - たまきさん» うへへぇーん(泣)たまきが優しいー。ログインってどうやるの? (2023年2月21日 14時) (レス) id: eec4e6d19c (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 緋月さん» ww大丈夫だよwwひづきがログインしたらこみゅとかで話せるんだけどねえ・・・ (2023年2月21日 13時) (レス) id: 10bfc6b38c (このIDを非表示/違反報告)
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