【02】 ページ19
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俺と彼女の出会いは、俺が社会人になって三年経った頃。
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なんとなく、だった。
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元々絵を描くことが好きだった俺は秋のある日なんとなく、有給を取って適当な電車に乗り込んだ。
そして適当に電車を乗り換えたりして、気づいたらとんだど田舎行きのローカル電車に揺られていて。
ここ、どこだ？ってぐらいの雑木林。なんとなくで降りた駅が、この町だった。
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無人駅。ICカードが使えなくて
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智『マジかよ…』
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駅員さんいないし、と頭を抱えていた時。
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『お困りですか？』
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ふ、と鈴のような声。
ふんわりとしたチュールスカート。秋色のカーディガン。
長い髪の毛は、少し温かい香り。
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一目惚れ、と言うものを初めてしたような気がした。
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『私、緑山Aって言います。お兄さんは？』
智『大野智。この町の人？』
『そう。数少ない若者』
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あは、と笑うAはすごい可愛くて。
真っ黒に荒んでいた俺の心をまるで浄化してしまうような白さを持っていた。
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なんでこの町に来たのか、とか。そういった類のことはAは全く聞かないで
ニコニコとこの平和すぎる町を案内してくれた。
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ここが駄菓子屋さん、ここが公民館。
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チヨさんに会ったのも、その時だった。
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『チヨさーーーーーん！』
チヨ『ありゃ、Aちゃん。なんだい、ボーイフレンドかい？』
『そう、かっこいいでしょ。』
智『え』
『え、あの、冗談ですよ！(笑)』
智『あ、びっくりした』
チヨ『あはは！お前さん、名前は？この町のもんじゃないだろう、こんなイケメンおったら戦争だもんなぁ』
智『大野です、大野智』
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チヨさんはここら辺で野菜を育てていた農家さんだった。
加えてお花に水をやったり、近くの木々にたまぁに手入れをしてやったり。
いわゆる心優しいおばあさん。
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都会のビルの隙間風とは違う風。
長閑な町を歩く一日は、あっという間で。
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智『案内してくれてありがとう』
『いいえ。気をつけて帰ってくださいね』
智『また来るよ』
『待ってます』
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夕暮れを背に、そんな約束をした。
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