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ユウキくんはつぶぐみの袋をぎゅう、と大事そうに握ってママに手を引かれて俺が降りる二つ前の駅で降りていった。
ばいばい、おにーちゃん。とニコニコと手を振って。
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静かになった車内、目を瞑っていると降りる駅に辿り着くのに時間はそんなに要さなかった。
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智「変わってないな」
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ICカードも通さないような無人駅。
それを見越して切符を買って来たので、カタンと切符入れにそれを入れて深く深呼吸。
秋の匂いがした。
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ナツミ『傷心旅行？』
智『うん、傷心旅行。』
ナツミ『あのさ、智。普通、マリッジブルーって私がなるもんね？なんで智がなってんの(笑)』
智『え、マリッジブルーなの？』
ナツミ『まさか。マリッジブルーになってるヒマがあるんだったら色々動く方が先決』
智『ふは、さすが』
ナツミ『日帰り？』
智『そのつもり』
ナツミ『ふーん、気をつけてよ。お土産よろしく』
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昨夜。俺の家で挙式の最後の確認をしていたナツミに、そう言うとあーだこーだ言いながらもお許しを貰った。
お土産を買うような場所じゃないから、ないよ、と困った顔で言うと「いらないよ、冗談に決まってるでしょ」と笑ってくれた。
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結婚。するんだ。
それだけ彼女に伝えたかった。
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智「さみぃな…」
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人があまり見受けられない、コンクリで設備されていない道をてくてくと迷うことなく歩く。
たまに人を見つけたかと思えば、田んぼでせっせと作業をしているご老人たち。
辺りを見渡せば、木、木、木。
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俺がいつも暮らしている、都会とはまるで正反対。
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ざく……と落ちていた葉を踏んだ音が合図だった。
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チヨ「あれま、智くんじゃないか」
智「チヨさん」
チヨ「あれまぁ！珍しく若いのが歩いてると思ったら！どうしたんだい、こんなところに」
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向こう側から、杖をついて歩いて来たおばあさんがいるなと思ったら
それはチヨさん。千代美、が本名だけどずっとチヨちゃんと呼ばれて来たという話を聞いて
俺と彼女はチヨさん、と呼んでいた。
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チヨ「Aちゃんかい？」
智「ええ。います？」
チヨ「元気とは言えないねぇ。もう寿命だろう」
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風が吹く。
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